前述したBLS雇用統計の公表前のタイミングで公表されることから市場の注目を集めがちであるが、集計方法が異なり両者は異なる指標である。(3) 新規失業保険申請件数・失業保険継続受給者数ETA*4(労働省雇用訓練局)が週次で公表している指標であり、先週分の新規の失業保険の申請件数や先々週時点での継続して受給した人の数を公表している。【図表4】新規失業保険申請件数・継続受給者数新規申請者継続受給者21/11/28-12/418.8万件03,0002,5002,0001,5001,00050019/119/319/519/819/1019/1220/220/520/720/920/1221/221/421/721/921/11(万件・万人)(出所)米労働省コロナ禍により異例の件数を記録したが、足元では減少傾向にある。また毎月12日を含む週の当該申請件数はBLS雇用統計の算出の対象期間となるため、注目度は高い。(4)JOLTSBLS雇用統計が労働者側から見た統計であるのに対し、採用側から見た指標がJOLTS*5である。求人数のほか、求人率、採用数、採用率、離職者数、離職率も公表している。求人数はコロナ禍からの米国経済の持ち直しを受けて上昇し、2021年7月には統計開始以来の最多件数を記録した。(5) アトランタ連銀WGT (Wage Growth Tracker)Fedに属する12地区連銀のうちの1つであるアトランタ連銀が月次で公表している、前年比での賃金の上昇率に関する指標である。【図表6】賃金上昇率賃金上昇率(雇用統計)前年の反動で大きく低下パンデミックにより低賃金労働者が大量に失職し、労働者プールに歪み→大きく上昇アトランタ連銀WGT0.09.07.08.06.04.02.03.01.0192021(年)(前年比:%)(出所)米労働省、アトランタ連銀前述したBLS雇用統計でも賃金の上昇率は公表されているが、アトランタ連銀WGTの方が労働者の構成の変化の影響を受けず、Fedも重視しているとみられる。2.Fedの金融政策における雇用の認識ここまで米国の主な雇用関連指標について解説してきたが、次にFedの足元の雇用についての認識について考察することとしたい。Fedが2021年12月14日から15日にかけて開催した米国の金融政策を決定する会合であるFOMC*6(連邦公開市場委員会)において、足元の雇用の増加が堅調に推移し、失業率も顕著に低下するなど、労働市場が改善したとの認識を示した。またコロナ禍を背景に2020年6月より行っている資産買入*7について、それまで毎月150億ドル*8ずつのペースで縮小していたが、このペースを2022年1月に倍速し、同年3月に買入を終了させる方向性を示した。さらに、事実上のゼロ金利政策解除のフォワードガイダンスのうち、足元の高インフレを踏まえ物価の条件を省き、雇用の最大化のみに絞る旨の修正を行った。【図表5】求人数2021年7月1,11001,2001,000800600400200070809101112131415161718192021(年)(万人)(出所)米労働省 ファイナンス 2022 Feb.69コラム 海外経済の潮流 138連載海外経済の 潮流
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