中国の人権問題に対する評価ドイツ国民が中国の人権状況をどのように評価しているか確認したい。CEIASの調査では、「中国の人権状況をどのように評価するか」という問いに、50%以上が「非常に悪い」「悪い」のいずれかを回答、「どちらかといえば悪い」も含めると、70%以上が中国の人権状況に対して悪い印象を持っていることが示された。また、「中国との関係で、人権問題を掲げることがドイツに経済的なコストを生じさせるか」という問いでは、50%以上が「経済的なコストが生じる」と回答(図20)。その上で、「経済的なコストが生じたとしてもドイツは人権問題を優先するべきか」という問いについて、約45%が「人権問題を優先すべき」と回答し、「経済を優先すべき」との回答は20%程度にとどまる(図21)。このように、経済的利益と人権問題について、世論では「経済的利益を優先すべき」という意見が多数を占める。一方、「どちらでもない」と態度を保留する回答が35%程度あることも重要だ。これまでのドイ*44) https://jp.reuters.com/article/germany-politics-3-idJPKBN2I91QD*45) https://www.jiji.com/jc/article?k=2021120800737&g=int*46) https://www.csu.de/common/download/Regierungsprogramm.pdf 266、267ツ政府の対中国政策と同様に、世論としても人権と経済のどちらか一方を強く優先することは難しいという、ジレンマがうかがえる。5今後の独中関係の動向(1)2021年9月 ドイツ連邦議会選挙の結果2021年9月に実施された連邦議会選挙では、社会民主党(SPD)は選挙前から54議席伸ばし第一党へ、キリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)は48議席を失い第二党へ、緑の党は51議席増で第三党へ躍進、自由民主党(FDP)も議席増、左派党は30議席を失う結果となった。(図22)その後、様々な連立のパターンが予想されていたが、11月24日にSPD-緑の党-FDPの三党が連立政権を樹立することで合意*44し、12月8日にショルツ新政権が誕生した*45。(2) マニフェスト、連立協定からみる各党の対中国政策と今後のドイツの対中国政策まず、選挙以前に第一党であったCDU/CSUは、マニフェストにおいて中国を「外交・安全保障政策上の最大の挑戦であり、協力相手であり、システム上のライバル」と表現。一方、中国の人権問題に対する記述は確認できず、CDU/CSUが中国との経済的なつながりを強めてきたこれまでの方針を今後も維持していく姿勢がうかがえる*46。次に、今回の選挙で第一党となったSPDは、「経済や環境に関する国際的な課題を中国なしで解決することはできず、中国との協力や競争に関する対話につい図20 Q. 中国との関係において、人権問題を掲げることがドイツに経済的なコストを生じさせると思うか高い経済コストが生じる12.5いくらか経済コストが生じる45.3経済コストは生じない13.5分からない28.7(単位:%)(出所)CEIAS図21 Q. 経済的なコストが生じたとしてもドイツは人権問題を優先するべきか強く反対5.7反対6.1やや反対7.4どちらでもない36.9やや賛成19.5賛成15.3強く賛成9.1(単位:%)(出所)CEIAS図22 2021年ドイツ連邦議会選挙 結果2061971189283391定数:735社会民主党(SPD)キリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)90年連合/緑の党自由民主党(FDP)独のための選択肢(AfD)左派党南シュレースヴィヒ選挙人同盟(出所)ドイツ連邦議会選挙 ファイナンス 2022 Feb.43ドイツと中国の2国間関係SPOT
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