ファイナンス 2022年2月号 No.675
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2019年以前のドイツにおける中国への感情中国に対してネガティブな印象を頂く割合は2008年頃に主要国で軒並み増加。ドイツの場合、33%(2006年)から68%(2008年)に急上昇している(図16)。主な要因は、当時、チベット自治区における中国政府による弾圧、人権侵害が世界的に大きな問題となったことが考えられる。事実、ドイツや英国の首脳は、これを理由に北京オリンピック(2008年)の開会式を欠席した。しかし、その後、ドイツにおけるこの割合は横ばいに推移し、2012年以降は2017年までおおむね低下。2018年から再度上昇に転じている。この背景には香港の問題があることが考えられるが、英、米、日と比較すると、対中観の悪化は緩やかである。コロナウイルス感染拡大(2020年)以降のドイツにおける中国への感情直近、2020年の調査では、60%以上が中国に対してネガティブな感情を抱いていることが示された(図17)。一方、ポジティブな感情を抱いている割合は15%程度(図17)。地域別にみると、旧東ドイツ圏では、中国に対してポジティブな感情を抱く割合が高い。また、「過去3年間において中国に対する感情がどのように変化したか」という質問では、46.7%が悪化したと回答(図18)。この調査結果から、ドイツにおいては中国に対してネガティブな感情を抱いている割合が高く、その傾向が近年強まっていると言える。その原因として、中国の武漢が起源と報道されている新型コロナウイルスの感染拡大、昨今の香港やウイグルに関わる人権問題や環境問題等の影響が考えられる。ドイツにおける中国のイメージ「中国と聞いて最初に思いつくことは何か?」という問いに対して、回答が多かった言葉をより大きく表現した図を紹介する(図19)。2020年9-10月の調査だったこともあり、新型コロナウイルス関連の言葉(COVID-19)が最も大きく描かれている。一方、人権侵害(absence of human rights)、独裁(dictatorship)、人口超過(over population)、安価な製品(cheap products)食(food)等の言葉は、ほぼ同じ大きさで示されており、「中国と言えば人権侵害」など特定イメージは必ずしも固定化されていないと言える。図17 ドイツ国内での中国への感情中立19.5ポジティブ14.2(単位:%)非常にネガティブ31.2ネガティブ30.4非常にポジティブ4.7(出所)CEIAS図18 過去3年間で中国への感情がどのように変化したか悪化46.7変化なし40.2向上13.1(単位:%)(出所)CEIAS図19 中国と聞いて最初に思いつくこと図16 2005年~2019年 中国に対するネガティブな印象を持つ人の割合(国別の推移)(年)109070806050403020200620052007200820092010201120122013201420152016201720182019(%)(出所)Pew Research Centerドイツ英国フランス日本米国42 ファイナンス 2022 Feb.SPOT

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