ファイナンス 2022年2月号 No.675
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近の感染拡大を含め、最悪の事態を想定した上で各種の対応に万全を期すとともに、「経済対策」を迅速かつ着実に実行することを通じて、足元の経済の下支えを図り、景気下振れリスクに対応し、感染拡大に際しても国民の暮らし、雇用や事業を守り抜き、経済の底割れを防ぐ、と述べられている。また、「新しい資本主義」を起動し、「成長と分配の好循環」を実現して、経済を自律的な成長軌道に乗せるとの方針が掲げられている。こうした下で、2021年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は2.6%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は1.7%程度となり、GDPは2021度中に感染拡大前の水準を回復することが見込まれている。また、消費者物価(総合)変化率は▲0.1%程度と見込まれている。3. 2022年度の経済財政運営の 基本的態度続いて、政府経済見通しは、翌年の経済財政政策の基本的な態度を次のように掲げる。すなわち、経済財政運営に当たっては、ウィズコロナの下で、社会経済活動の再開・継続を図りつつ、安全・安心を確保していくとともに、「経済対策」を迅速かつ着実に実施し、公的支出による下支えを図りつつ、消費や設備投資といった民需の回復を後押しし、経済を民需主導の持続的な成長軌道に乗せていく。最大の目標であるデフレからの脱却を成し遂げる。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期する。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組んでいく。その上で、岸田内閣が目指すのは、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとする新しい資本主義の実現である。成長を目指すことは極めて重要であり、その実現に全力で取り組む。しかし、分配なくして次の成長なし。成長の果実をしっかりと分配することで、初めて次の成長が実現する。具体的には、「科学技術立国の実現」、地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」、「経済安全保障」を3つの柱とした大胆な投資とともに、デジタル臨時行政調査会における規制・制度改革等を通じ、ポストコロナ社会を見据えた成長戦略を国主導で推進し、経済成長を図る。また、賃上げの促進等による働く人への分配機能の強化、看護・介護・保育等に係る公的価格の在り方の抜本的な見直し、少子化対策等を含む全ての世代が支え合う持続可能な全世代型社会保障制度の構築を柱とした分配戦略を推進する。加えて、東日本大震災からの復興・創生、高付加価値化と輸出力強化を含む農林水産業の振興、老朽化対策を含む防災・減災、国土強靱化や交通、物流インフラの整備等の推進、観光や文化・芸術への支援など、地方活性化に向けた基盤づくりに積極的に投資する。年代・目的に応じた、デジタル時代にふさわしい効果的な人材育成、質の高い教育の実現を図る。2050年カーボンニュートラルを目指し、グリーン社会の実現に取り組む。これまでにない速度で厳しさを増す国際情勢の中で、国民を守り抜き、地球規模の課題解決に向けて国際社会を主導するため、外交力や防衛力を強化する等、安全保障の強化に取り組む。これまでの政府・与党の決定を踏まえた取組を着実に進めるとともに、財政の単年度主義の弊害を是正し、科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備などの国家課題に計画的に取り組む。日本銀行には、感染症の経済への影響を注視し、適切な金融政策運営を行い、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。4.2022年度の日本経済(見通し)最後に、以上のような政策態度を掲げたのちに見込まれる2022年度の日本経済の姿が描かれる。すなわち、2022年度については、「経済財政運営の基本的態度」に基づき、「経済対策」を迅速かつ着実に実施すること等により、実質GDP成長率は3.2%程度、名目GDP成長率は3.6%程度と見込まれる。GDPは過去最高となることが見込まれ、公的支出による経済下支えの下、消費の回復や堅調な設備投資に牽引される形26 ファイナンス 2022 Feb.特 集

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