ファイナンス 2022年2月号 No.675
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2022年1月17日に「令和4年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「政府経済見通し」という。)が閣議決定された。政府経済見通しは、翌年度の経済財政運営に当たって政府がどのような基本的態度をとるのか、及び、それを踏まえて経済はどのような姿になるのかを示した政府文書であり、内閣府が作成の上、財務省の税収見積もり、延いては予算の前提として用いられたのち、予算の国会提出と同時期に閣議決定されることで最終的に政府見解となる。今回の政府経済見通しでは、2021年度(令和3年度)のGDP成長率は、実質で2.6%程度、名目で1.7%程度となり、GDPは年度中にコロナ前の水準を回復することが見込まれる。2022年度(令和4年度)は、経済対策を迅速かつ着実に実施すること等により、GDP成長率は実質で3.2%程度、名目で3.6%程度となり、GDPは過去最高となることが見込まれる。公的支出による経済下支えの下、消費の回復や堅調な設備投資に牽引される形で、民需主導の自律的な成長と「成長と分配の好循環」の実現に向けて着実に前進する見込み。本稿では、令和4年度政府経済見通しの具体的な内容について紹介する。GDPの内訳項目等の詳細な見通しについては、文末の表を参照されたい。1.政府経済見通しの位置づけ政府経済見通しは、政府による公式な経済予測であるのみでなく、今後政策的に実現を目指していく経済の姿を示しているということができる。これは、政府経済見通しが、足もとの経済情勢を適切に踏まえて翌年度の経済を予測するのはもちろんのこと、我が国政府が経済財政運営の基本的態度に基づき実行する各種の施策による効果を織込んでいるためである。すなわち、政府経済見通しは、(1)翌年度の経済財政運営に当たって、政府がどのような基本的な態度をとるのか、(2)そのような基本的態度に基づいて経済財政運営を行うことによって、経済はどのような姿になるのか、という2点について、政府の公式見解を閣議決定により表明する。2.2021年度の日本経済(実績見込み)本年の政府経済見通しによれば、我が国経済は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響の下にあるが、2021年9月末の緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除以降は、厳しい状況は徐々に緩和されており、このところ持ち直しの動きがみられる。ただし、2021年度中のリスク要因として、オミクロン株を含めた新型コロナウイルス感染症による内外経済への影響、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意するとともに、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要があるといったことが挙げられている。こうした中、政府経済見通しの認識によれば、政府は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止、「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保を柱とする「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(以下「経済対策」という。)を策定し、令和3年度補正予算を編成した。さらに、新型コロナウイルス感染症に対しては、最令和4年度 政府経済見通しについて内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官(経済見通し担当)付 瀧口 暉己 ファイナンス 2022 Feb.25令和4年度予算特集:1特 集

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