ファイナンス 2022年2月号 No.675
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2.令和4年度国債発行計画の概要令和2年度において、3次にわたる補正予算の結果、国債発行額が100兆円以上増加する中、短期国債(満期が1年以下の国債)の発行が増大し、3年度当初予算ベースにおいても引き続き短期国債の発行額が多額で、市中発行額に占める割合が約4割を占めるようになっていた。短期国債は毎年借換える必要があり、借換えるたびに金利変動のリスクを負うとともに毎年度の借換債を増額させるものであることから、この縮減が国債管理政策上大きな課題となっている。また、コストとリスクの分析では、10年債を増額するとともに2年債等の発行額を減額することがコスト・リスクともに低減させるという分析もなされていた。令和4年度国債発行計画は、以上のような市場環境や債務管理上の課題を踏まえつつ、昨年11月~12月に実施した「国債市場特別参加者会合」及び「国債投資家懇談会」等において、市中発行の年限構成等について市場関係者(機関投資家、証券会社等)との対話をきめ細かく実施し、市場ニーズの把握に努めた上で、策定したところである(表1)。これらの会合においては、短期債を減額していくという当局の方針に理解を示す意見や、40年債について優先順位の高いものとして増額を希望する意見、10年債について日銀の金融政策のコントロール下にあることから増額・減額いずれも可能という意見、需給環境に鑑み2年債の減額を希望する意見、流動性供給入札(残存1-5年ゾーン)について需給がタイトな状況が継続していることから増額を希望する意見等が聞かれた。(1)発行根拠法別発行額令和4年度の国債発行総額は、前年度当初比▲21.0兆円、前年度補正比▲9.3兆円の215.0兆円となり引き続き高い水準が続いている。発行根拠法別(表1左)の内訳をみると、まず、一般会計予算の歳入となる新規国債(建設国債・特例国債)は、前年度当初比▲6.7兆円、前年度補正比▲28.7兆円の36.9兆円となっている。復興債は、東日本大震災からの復興のための施策に要する費用の財源に充てるため、復興特別税等の収入が確保されるまでのつなぎとして発行されるものであり、令和4年度は0.2兆円の発行を予定している。財投債は、財政融資の新規貸付規模や財政融資資金全体の資金繰り等を勘案した結果、令和4年度は前年度当初比▲20.0兆円、前年度補正比+10.0兆円の25.0兆円となっている。借換債は、過去に発行した国債の満期到来に伴う借換えのために発行するものであり、国債発行総額の大半を占めている。令和4年度の借換債発行額は、令和2年度で大幅に増発した2年債が償還を迎えることもあり、前年度当初比+5,7兆円、前年度補正比+9.3兆円の152.9兆円となっている。(表1)令和4年度国債発行計画の概要対3年度当初対3年度補正後40年債4.2+0.6+0.630年債10.8--20年債14.4--10年債32.4+1.2+1.25年債30.0--2年債33.6▲ 2.4▲ 2.4短期債60.4▲ 22.8▲ 13.6 10年物価連動債0.8-- 流動性供給入札12.0+0.6+0.6合計198.6▲ 22.8▲ 13.6区 分令和4年度当初対3年度当初対3年度補正後カレンダーベース市中発⾏額(定期的な入札による発⾏)198.6▲22.8(221.4)▲13.6(212.2)その他(個人向け国債等)16.4+1.8(14.6)+4.3(12.2)合計215.0▲21.0(236.0)▲9.3(224.4)区分令和4年度当初対3年度当初対3年度補正後新規国債(建設・特例国債)復興債0.2▲0.0(0.2)+0.1(0.0)財投債25.0▲20.0(45.0)+10.0(15.0)借換債152.9+5.7(147.2)+9.3(143.7)国債発⾏総額215.0▲21.0(236.0)▲9.3(224.4)▲28.7(65.7)36.9▲6.7(43.6)令和4年度当初区  分消化⽅式別発⾏額発⾏根拠法別発⾏額カレンダーベース市中発⾏額(年限別)(単位︓兆円)(単位︓兆円)(単位︓兆円)(注1)括弧内の値は年間発⾏額(注2)計数ごとに四捨五入したため、合計において一致しない場合がある。=(注1)括弧内の値は年間発行額(注2)計数ごとに四捨五入したため、合計において一致しない場合がある。22 ファイナンス 2022 Feb.特 集

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