ファイナンス 2022年1月号 No.674
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常識」を意識化し、固定観念を取り払うことで物の見方や考え方を広げる非常に良いチャンスだと思います。それは民間企業出身の研究員の方々にとっても財務省職員にとっても有意義だと思います。私自身も株式会社産業革新機構という官民ファンドで大勢の異なるバックグラウンドを持つ100名以上の若い人々と仕事をしたり、アジア開発銀行で60を超える国籍を持つ人たちと働いたりしたことが非常に刺激になりました。今はオンラインのツールも導入されたので、皆さんにはそのツールも利用して積極的に交流してほしいと思っています。3.栗原所長のご経験について三箇山:所長が財務総研で仕事をするうえで心掛けていることを教えてください。栗原:財務総研の業務に限りませんが、常に職場で行っている業務において、時代の変化に応じて見直すべきものはないかとの点に心掛けています。今行っている業務は、その開始当時の状況下で、皆が衆知を集めて議論し、合理的な意義・目的があったからこそ、その業務があるということだと思います。しかし、時代環境は常に変化していくので、現時点でも当時意識した業務の意義・目的は有効なのか、新しいポジションに就くたびに自問自答するようにしています。また、その業務の意義・目的が現在も有効である場合でも、今のやり方が、テクノロジーの進展などの時代の変化に応じて、最も効率的効果的なのか、を考えるようにしています。例えば、財務総研においても、ランチミーティングや研究会などは、以前は物理的に会議を行っていたため、参加人数に会議室の大きさという物理的な縛りがあり、30人位までが限界でありましたが、コロナ禍を受けてオンライン化したことで、開催の事務負担の削減だけでなく人数についても物理的な制約がなくなったことから、非常に多くの人に参加してもらえるようになりました。これは、同じ活動をしても、やり方の変化により、財務総研の強みである研究者・有識者とのネットワークがより発揮できるという一つの証左だと思います。三箇山:財政金融研究所で、過去勤務されていた際に、印象に残っており、その後の仕事に役に立ったと考えていることがありましたら教えてください。栗原:1点目は、海外の研修生の受入れセミナーである「アジア開発銀行・大蔵省財政金融研究所トレーニング・セミナー」や、LSEやウォートン・スクールとの国際コンファレンスなど国際的な業務に携われたことです。「アジア開発銀行・大蔵省財政金融研究所トレーニング・セミナー」については、その2回目を担当(その後、財務総研独自の今の開催方式に変更)したのですが、20代半ばで初めて英語を使って国際機関と仕事をする機会で非常に印象深い経験です。また、国際コンファレンスとしては、アメリカのウォートン・スクールやイギリスのLSEとの開催を担当しました。先方の大学・研究機関の研究者の方々との調整が必要で苦労しましたが、今振り返ると非常に貴重な体験ができたと思います。2点目は、当時の財務総研内外で知合いが増え、その後も含め、種々教えを乞うことができる方に出会えたことです。財務総研には、当時も民間企業からの研究員の参加が多かったですし、外部の研究者の方との研究交流の機会も多かったので、それらの方々と、その後の様々な場面で話を聞いたりアドバイスをもらったりすることができました。3点目は、アジア諸国を訪問することができたことです。当時のアジア諸国の多くは、民主化途上・直後の段階で、経済発展段階もシンガポール・香港でも一人当たりGDPがようやく一万ドルに達した位で、なお貧困が根強くありました。この昔の状況を知っているからこそ、アジア諸国がこの30年で急激に成長したことを肌で感じ取ることができていると思います。今日現在、「普通」と思われることが、30年後は普通でなくなるということは、皆さんにも覚えていてほしいと思います。三箇山:財務総研の研究員となってまだ日が浅くよくわかっていなかった部分も多かったので、これから働いていくうえで非常に有意義なお話でした。71 ファイナンス 2022 Jan.連載PRI Open Campus

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