ファイナンス 2022年1月号 No.674
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PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 3保有する輸出入申告の個票データを用いた統計的研究を実施する研究者の公募が行われましたが、2022年春を予定している共同研究開始に向けて、部内の体制を整えています。近年、ビックデータの活用によるデータ分析があらゆる分野で進展していますが、我々もその流れに取り残されず、EBPMにも積極的に取り組む必要があると思います。3つ目は、財務省職員の成長機会をできるだけ多く提供することです。各種研修や、ランチミーティング等のセミナー、ディスカッション・ペーパー等のペーパーの執筆などにより、財務総研には、財務省職員の成長に利用して頂けるツールが多々存在しています。また、財務総研には、前述のとおり、外部の研究者の方も多数往来されており、部内の職員にアカデミアの世界に触れてもらうことによって、自己研鑽に励んでもらうことも可能だと思います。これは同時に、アカデミアの人たちに政策への興味を持ってもらう機会にもなると思います。4つ目は、英語による情報発信を強化することです。例えば、財務総研が年4回程度発行しているフィナンシャル・レビューの英語版として「Public Policy Review」がありますが、同誌は財務総研のホームページのアクセス数でも常に上位に位置しています。日本の財政について制度と最近の議論の状況について、5本前後のまとまった論文が読める雑誌として、海外からの関心も高い雑誌です。私自身も、海外の方と機会があるごとに、本誌についてPRするように努めています。先日のTokyo Fiscal Forum Seminarでも、最新号が財務総研のホームページに掲載されている旨紹介させて頂きました。最後に、過去にとらわれずに絶えず時代の動きをにらんで自ら変化していくことです。財務総研が誕生してから約35年になりますが、この30年で日本経済・世界経済も大きく変動しました。アジア経済も30年前とは全く様相を変えています。組織としての立ち位置を時代に合わせてよく考えたうえで、持っているツールを最大限活用していくことが必要だと思います。三箇山:所長が過去に経験された他の部局と異なる財務総研の特徴があれば教えてください。栗原:一番違うのは「時間軸」ですね。財務省の他の部局のように法令や予算を所管していたり、個別の行政を司っていたりするのであれば、自分の担当所管分野で何か対応すべきことが起こると、場合により即対応が必要ということになります。一方で財務総研の扱っている業務は「研究」がメインなので、今日明日で答えが導けるものでもないため、より長い時間軸、数か月から一年位の時間軸で業務を行うことになります。逆に、所管行政分野があると業務はその分野が中心ということになりますが、研究活動主体の財務総研ではその時々の経済財政の課題を幅広く扱えるという、業務内容の自由度が高いということが言えると思います。三箇山:財務総研の活動には、大学、国際機関での研究経験を持つ方や民間企業からの研究員が参加していますが、異なるバックグラウンドの人たちが参加することで、どのような効果を期待していますか。栗原:財務総研には、国家公務員である職員のみならず、研究者としてのバックグラウンドを持つ任期付き国家公務員の方や、民間企業でのバックグラウンドを持つ研究員の方々が数多く参加しており、霞が関の中央省庁においても、その職員の多様性が非常に大きい組織の一つだと思います。こうした多様な背景・職歴を持つ人たちがお互いの知見・経験を共有することでお互いの成長機会につながることを一番期待しています。異なるバックグラウンドの人と交流することは、自分のこれまでの「無意識な ファイナンス 2022 Jan.70連載PRI Open Campus

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