ファイナンス 2022年1月号 No.674
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豊髙:財務総研が、この事務年度で取り組もうとしている研究・交流活動について、簡単にご紹介いただけますか。栗原:研究活動としては、設立時の問題意識である中長期的な経済財政に関わる研究という大枠の下、財務省内の他の部局ではなかなか取り組めない「一歩先の経済社会」の変化を見据えた研究を行ってきています。研究テーマについては、毎年大きく変えていくよりも、ある程度の継続性を持たせるように心がけています。近年では、人口動態やそれを受けた働き方の変化について研究会を開催しています。研究交流活動としては、中国やインド、ASEAN諸国の研究機関と連携して、ワークショップや研究交流活動を行っています。海外との交流においては、前述した財務総研の持っている様々な研究ツールを交流の手段として最大限有効に活用していくことを意識しています。組織のトップ同士が年に1回話をするだけといった「点」の付き合いでは、交流の幅が広がらないので、スタッフレベルの交流や交流の頻度を増やし、「面」での付き合いにしていくことが重要と考えています。その際には、コロナ禍で直接的な交流に制限がある中で、オンラインを上手く活用することがますます重要になると思います。実際、オンラインの活用により、例えば、これまでは不可能だった日本と現地にいる有識者・実務家をすべてつないだ参加者100名程度の研究会の開催もできるようになりました。2.財務総研の「強み」と役割豊髙:財務総研の「強み」はどこにあるとお考えですか。栗原:財務総研の研究活動は、財務総研のみで行っているものではなく、研究会やフィナンシャル・レビューの編纂などを通じて、数多くの外部の研究者・有識者の力をお借りして進めています。今までに財務省の様々な部局を経験しましたが、こうした外部の研究者・有識者との幅広いネットワークは他の部局にはない「強み」と言えると思います。豊髙:「研究所」という名前ですが、大学などの研究機関や民間のシンクタンクとの違いはどのような点でしょうか。栗原:研究に主眼を置くという点では共通するものの、財務総研は「政策当局の中」にあるということが一番の違いですね。財務省という政策当局の中で、それぞれの内部部局と関わりを持ちつつ、かつ数多くの外部の研究者も交えて研究活動を行っているという点だと思います。豊髙:財務総研の財務省内・社会での役割はどのようなもので、今後、どのような方向を目指していくべきとお考えですか。栗原:1つ目は、先ほどの「強み」とも関わってくる部分になりますが、自らも属する政策当局と、幅広い研究者とのネットワークを生かして、政策当局とアカデミアの架け橋の役割を果たすことが、財務総研の強みを活かすことができる大切な役割と考えています。様々な研究活動も、こうした視点を横断的に持って進めていければと考えています。2つ目は、行政データを用いた研究を進めていくことです。2021年秋には、財務総研と共同して税関が69 ファイナンス 2022 Jan.連載PRI Open Campus

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