ファイナンス 2022年1月号 No.674
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こうした認識に立ち、新型コロナウイルス感染症の困難を乗り越え、ポストコロナの未来を切り拓くことで、国民の皆様に安心と希望を届けることを目的として、昨年11月19日に、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定いたしました。本経済対策により、新型コロナウイルス感染症の拡大防止、「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保を進めてまいります。令和3年度補正予算は、政府として国民の皆様にできるだけ早く支援をお届けできるよう、昨年12月20日に成立しました。あわせて、「16か月予算」の考え方の下、この補正予算と一体のものとして切れ目なく対応していくため、12月24日に令和4年度予算の概算を閣議決定いたしました。この令和4年度予算案は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした「新しい資本主義」の実現を図るとともに、経済・財政一体改革を着実に推進することで、これまでの歳出改革の取組を継続し、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、メリハリの効いた予算としております。具体的には、変異株による感染拡大等、予期せぬ状況変化への備えとして、予算案においても5兆円のコロナ予備費を措置することとしております。また、先述のとおり、新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越えた先に「新しい資本主義」の実現を目指します。そのために、まずは成長戦略として「科学技術立国」の観点から、デジタル、グリーン、量子、AI等の研究開発の推進、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けたデジタル庁への情報システム関係予算の一括計上等の推進、経済安全保障の推進に取り組んでまいります。次に分配戦略として、看護・介護・保育・幼児教育などの現場で働く方々の収入の引上げ、成長分野を支える人材の育成や非正規労働者のステップアップ、円滑な労働移動を支援するなど、人への投資を支援していくこととしております。加えて、歳出改革の取組としては、骨太方針2021で定めた取組を継続するとともに、国庫債務負担行為や基金の活用により、予算の単年度主義の弊害是正などに取り組み、予算の質も向上させてまいります。令和4年度財政投融資計画は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者への支援に引き続き万全を期すとともに、ポストコロナを見据えた成長力強化に取り組むほか、科学技術立国の実現、「デジタル田園都市国家構想」や経済安全保障の推進、防災・減災、国土強靱化等に資するインフラ整備等の分野に重点的に投融資を行うため、約18.9兆円としております。令和4年度税制改正の大綱においては、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための措置を講じることとしております。また、カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅ローン控除等を見直すこととしております。令和4年度国債発行総額は、令和3年度補正後に比べて、借換債等が増加する一方、新規国債が大きく減少することに伴い、全体としては減少することとなっております。こうした中、定期的な入札による市中発行額については、短期債の発行減額に努めるとともに、市場ニーズを踏まえた国債発行を行いつつ、新型コロナウイルス感染症対応で短期化した平均償還年限を是正することとしております。また、日本の財政について、足もとの新型コロナウイルス感染症対応により一層厳しさを増していることは事実でありますが、総理も御発言されているとおり、財政は国の信頼の礎であり、その旗は降ろしてはなりません。また、新型コロナウイルス感染症以前から、少子高齢化の進行を背景に、社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的課題を抱えております。新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越え、経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいくことにより、次の世代に未来をつないでいくことが我々の責任です。骨太方針2021における2025年度のプ ファイナンス 2022 Jan.2

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