ファイナンス 2022年1月号 No.674
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拡大するマッチングアプリ市場・婚活サービスを通じて結婚した人の割合は増え続けており、上昇起因となっているのはマッチングアプリに代表されるネット系婚活サービスである(図表9)。今後もオンラインでの婚活マッチングサービス市場は拡大するとみられ(図表10)、出会いのプラットフォームとしての魅力はさらに増すであろう。・マッチングアプリのメリットとしては、他の出会い方と比較して、出会うことが可能な人数が膨大であることに加え、金銭的コストが低いことが挙げられる(図表11)。また、ネット上でのやり取りが主であるため時間的制約が少なく、外出を自粛するコロナ禍でも婚活が可能であることも足元での利用者の増加に繋がったと考えられる。・恋人を作るにあたっての最大の障壁であった「出会いがない」ことやコロナ禍での制約をデジタル技術の活用でクリアしたという点で、マッチングアプリは画期的なサービスと言える。しかし、マッチングアプリの利用者が増える一方で、足元で婚姻率の低下傾向に歯止めをかけるまでには至っておらず(図表12)、その活用には更なる工夫が必要であろう。(図表9)婚活サービスを通じて 結婚した人の割合16.5%0.02.04.06.08.010.012.014.016.018.020202019201820172016201520142013(%)ネット系婚活サービス婚活パーティ・イベント結婚相談所合計(図表10)国内のオンライン恋活・婚活マッチングサービス市場規模2023202220212020201920182017予測値01,000800600400200(億円)(図表11)主な婚活サービスの特徴(一例)サービスサービスの類型出会える人数金銭的コスト・制約結婚相談所仲介人型紹介された数人初期費用数万円+月会費1万円~合コン仲介人型参加者数人近しい紹介者の存在マッチングアプリインターネット型登録者数万人無料~参加費数千円(図表12)婚姻件数及び婚姻率 (人口千対)の推移3.03.54.04.55.05.5455055606570(‰)756.020101314151617181920(万件)婚姻件数婚姻率(右軸)マッチングアプリの課題・マッチングアプリの利用に際して、大量の出会いが提示されることで逆に相手を選べなくなってしまったり、一人にアプローチするためのコストが低減したことで特定の相手に拘るインセンティブが働きづらいなど(図表13)、安価で大量の出会いが逆に非マッチングを起こしている可能性がある。・また、結婚相手の条件として重視する項目としては、男女ともに「人柄」が挙がるものの(図表14)、マッチングアプリで相手を探す際には「経済力・職業・学歴・容姿」といったネット上の文字と画像で伝わる項目が主に着目される。そのため、限られた評価軸での魅力ある人物に人気が集中し、登録者が増えても全体でのマッチング率は低水準に留まる可能性が考えられる。・事業者側が人柄や趣味・嗜好を含んだ軸から出会える対象を意図的に絞ったり、対面で気軽に出会えるようなサポートが既に行われているが(図表15)、マッチング率向上のためには多様な評価軸を持って相手と向き合うことやその促進が利用者と事業者の双方に求められるであろう。(図表13)行動経済学から見たマッチングアプリの課題これまでの婚活(結婚相談所・合コンなど)行動経済学上の作用マッチングアプリ数人~数十人の中から相手を選べば良く、選択に伴う負荷は少なかった。決定回避の法則登録者数万人以上の中から相手を選ばなければならず、選択肢を吟味する負荷が大きくなった結果、選ぶこと自体をやめてしまう。時間的・金銭的コストが既に相当程度発生しており、サンクコスト効果が働くことで、相手に求める条件の不一致はある程度許容されていた。サンクコスト効果一人にアプローチするためのコストが低減したことで特定の相手に拘るインセンティブが働きづらく、僅かな条件の不一致でマッチングを見送ってしまう。(図表15)マッチング率向上のための、事業者側の工夫例サービス名事業者側のサポートknew利用者側に顔写真の公開や検索機能、メッセージのやり取りがなく、事前アンケートを元に運営側が相性が良いと判断した異性が出会う対象となる。タップル運営側が趣味・嗜好で利用者をグループ化し、共通した趣味・嗜好を持つ相手が出会う対象となる。with心理学を利用した性格診断から、相性の良い異性を運営側が薦める。Dine運営側が適切な飲食店を選定し、互いに興味のある飲食店をきっかけに登録者間における対面での出会いを促す。(図表14)結婚相手の条件として重視・考慮する項目020406080100(%)女性020406080100人柄家事・育児の能力仕事への理解共通の趣味対面での確認が必要ネット上で判断可能経済力職業学歴容姿人柄家事・育児の能力仕事への理解共通の趣味対面での確認が必要ネット上で判断可能経済力職業学歴容姿(%)男性重視する考慮する重視する考慮する(出典)厚生労働省「人口動態統計」、国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」、総務省「平成27年国勢調査」、日経VALUE SEARCH「ブライダル関連サービス」、リクルートブライダル総研「少子化課題における解決優先度に関するレポート」「恋愛・結婚調査2019」「婚活実態調査2021」「自律的出会いの提言レポート2017」、マッチングエージェント「国内オンライン恋活・婚活マッチングサービスの市場調査」、ニッセイ基礎研究所「コロナ禍における少子化対策」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2022 Jan.62コラム 経済トレンド 91連載経済 トレンド

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