ファイナンス 2022年1月号 No.674
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その一方で、前述のとおり、JBATAは、ZTIBORを廃止し、DTIBORに一本化する方向で検討を進める予定です。JBATAは、証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions, IOSCO)が2013年に公表した金利指標に関するIOSCO原則の遵守状況について年次で自己評価を行っており、同原則を遵守している一方、原則7(データの十分性)および原則13(移行)に関して一部課題を認識しており、これらの項目に関する改革の検討を進めています。このデータの十分性の観点から、本邦オフショア市場の長期的な縮小傾向も踏まえて2018年10月にはZTIBORとDTIBORの統合について市中協議を実施し、2019年5月にはDTIBORへの一本化を最も有力な選択肢として検討を進めることとしています。なお、具体的なZTIBOR廃止の時期としては、現時点では2024年12月末が想定されています*34。図表9がDTIBORとZTIBORの実際の値の推移を示したものですが、値そのものは似ているものの近年乖離幅が大きくなっています。DTIBORとZTIBORのスプレッドは国内と国外の需給の差などで解釈されます。図表9では、円LIBORの推移も記載されており、オフショアという意味でZTIBORと似た概念ではありますが、その動きは大きく異なる点に注意が必要です。円LIBORとZTIBORを比較すると、1998年にその乖離が大きくなっており、かつて「ジャパン・プレミアム」と解釈されることもありました。もっとも、2010年以降、両者には解離が生まれている点に*34) 全銀協TIBOR運営機関「『金融指標に関するIOSCO原則(19原則)』の遵守状況等について」(2021年3月)を参照。*35) 例えば下記をご参照ください。 https://www.ffaj.or.jp/investors/education/留意が必要です(2020年以降、両者のスプレッドは縮小しています)。4おわりに本稿では金利先物の概要について説明をしました。金利先物についてさらに勉強したい読者はタックマン(2016)やハル(2012)など標準的なファイナンスの教科書に加え、一般社団法人 金融先物取引業協会による各種教材*35等を参照していただければ幸いです。次回は海外の金利先物について解説することを予定しています。参考文献[1]. 服部孝洋(2019)「イールドカーブ(金利の期間構造)の決定要因について―日本国債を中心とした学術論文のサーベイ―」ファイナンス10月号、41ー52.[2]. 服部孝洋(2020a)「日本国債先物入門―先渡と先物価格の乖離を生む要因―」『ファイナンス』3月号、37ー41.[3]. 服部孝洋(2020b)「金利リスク入門―デュレーション・DV01(デルタ、BPV)を中心に―」『ファイナンス』10月号、54ー65.[4]. 服部孝洋(2021a)「金利指標改革入門―店頭(OTC)市場とLIBOR不正操作問題について―」『ファイナンス』11月号、10ー19.[5]. 服部孝洋(2021b)「リスク・フリー・レート(RFR)入門-TONA,TORF,OISを中心に-」『ファイナンス』12月号、14ー24.[6]. 服部孝洋・日本取引所グループ(2021)「国債先物入門」[7]. ブルース・タックマン(2012)「債券分析の理論と実践(改訂版)」東洋経済新報社[8]. ジョン・ハル(2016)「フィナンシャルエンジニアリング〔第9版〕―デリバティブ取引とリスク管理の総体系」きんざい[9]. レオ・メラメド(1997)「エスケープ・トゥ・ザ・フューチャーズ―ホロコーストからシカゴ先物市場へ」ときわ総合サービス出版調査部[10]. Burghardt, G. (2003)“The Eurodollar Futures and Options Handbook” Irwin Library of Investment & Finance.図表9 ユーロ円TIBOR(ZTIBOR)、日本円TIBOR(DTIBOR)およびユーロ円LIBORの推移ユーロ円TIBOR日本円TIBOR円LIBOR-0.200.20.40.60.811.21.4(%)989900010203040506070809101112131415161718192021(出所)Bloomberg51 ファイナンス 2022 Jan.金利先物およびTIBOR入門SPOT

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