ファイナンス 2022年1月号 No.674
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活発化が中長期的に求められているともいえます(TONAの詳細は筆者が執筆した「リスク・フリー・レート入門」を参照してください)。TONA金利先物については、TFXにおいて2017年7月に取引は停止された一方で、取引のニーズが見られ始めた場合には速やかに取引の再開を検討するとしています*24。4TIBOR(Tokyo InterBank Offered Rate)とは4.1 TIBORとはここからユーロ円金利先物の原資産であるTIBORについてより詳細に考えていきます。そもそもTIBORとは、Tokyo InterBank Offered Rateの略であり、円LIBORと類似した投票に基づく金利指標です。TIBORが近年注目を集めている背景には、LIBORが(ドルの一部テナーを除き*25)2021年末をもって公表を停止するなか、2022年以降も継続して公表されることがあります。円LIBORと基本的に同じ構図をとるため、TIBORは「前決めターム物金利」というLIBORと全く同じ特性を有することから、実務的に使いやすいといえます(後決め金利が実務的に使いにくい点は、服部(2021b)で詳細に説明しました)。TIBORについてもLIBORと同様、レファレンス・バンク(パネル行)が金利を提示することで算出されます。TIBORの場合、呈示されたレートのうち、最も高いレートを呈示した2社の値、および、最も低いレートを呈示した2社の値を除外したものを母数として、単純平均したレートを公表しています。その意味では、LIBORと若干算出方法が違いますが、一部をカットした平均(トリム平均)を用いている点は共通しています。TIBORについては1週間物、1か月物、3か月物、6か月物、12か月物の5つの期間(テナー)が算出されています。前述のとおり、TIBORの特徴は、「日本円TIBOR」と「ユーロ円TIBOR」という二種類ある点です(実務家は前者を「DTIBOR」、後者を「ZTIBOR」と呼びます)。両者の違いは図表6にまとめられていますが、大きな構造は同じであるものの、前者は国内で決*24) 「金融取、翌日物金利先物の取引を停止」(金融ファクシミリ新聞、2017/6/23)を参照。*25) ドルLIBORは一部テナーを除き2023年6月末に停止予定です(1週間物、2ヶ月物は2021年12月末に公表停止)。*26) ここでの記述は「TIBOR、『360日基準』に変更、金融界方針――指標性確立を狙う」(日経金融新聞、1997/8/20)を参照しています。定される一方、後者は「ユーロ円」という名称のとおり、日本国外(オフショア)で金利が定められます。歴史的にはユーロ円TIBORが1980年代、金利スワップ市場が拡大する中で作られます。もっとも、かつては通信社などが独自に算出しており、その値がバラバラであるなどの問題を有していました。これらを背景に、1998年から全銀協が一本化して公表することとなりました。一方、日本円TIBORは1995年から全銀協が集計して公表しています。図表6 日本円TIBORとユーロ円TIBORの比較指標日本円TIBOR(DTIBOR)ユーロ円TIBOR(ZTIBOR)反映する市場短期金融市場(インターバンク市場)無担保コール市場オフショア市場テナー1週間物、1か月物、3か月物、6か月物、12ヵ月物公表毎営業日act(金利日数)365日ベース360日ベース運営主体全銀協TIBOR運営機関(出所)一般社団法人全銀協TIBOR運営機関資料より筆者作成ユーロ円TIBORは図表6にあるとおり、360日ベースになっていますが、もともとは他の円金利のように365日が用いられていました。もっとも、この慣習は当時、短期金融市場の国際的な取引実態にそぐわないと指摘されていました。1990年代は日本における金融ビックバンが進められており、国際基準に従うという機運もあったことから、1998年から全銀協が一本化して公表するタイミングで、全銀協の算定方式を360日基準に見直しています(日本円TIBORについては今でも365日ベースが用いられている点に注意が必要です)*26。ちなみに、後述するTIBOR改革の結果、現在はユーロ円TIBOR、日本円TIBORともに全銀協TIBOR運営機関(JジャバタBATA)が算出を行っています。また、ユーロ円TIBORは将来的に廃止し、日本円TIBORに一本化する方向で検討することとなっています(こちらも詳細は後述します)。4.2 TIBOR改革TIBORにおいて重要な点は、前述のとおり、国際的にはLIBORが(ドルの一部テナーを除き)2021年末をもって停止する中、TIBORは2022年以降も継続 ファイナンス 2022 Jan.48金利先物およびTIBOR入門SPOT

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