ファイナンス 2022年1月号 No.674
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については筆者が執筆した「金利スワップ入門」や「リスク・フリー・レート入門」を参照してください)。3.4 ユーロ円3ヵ月金利先物の流動性ユーロ円金利先物の特徴は、日本国債先物やユーロドル金利先物などに比べて流動性が低い点です。たとえば日本国債先物の場合、一日あたり2兆円を超える売買がありますが、ユーロ円金利先物の場合、ほとんど取引がなされない日も少なくありません(したがってユーロドル金利先物やFF金先とは異なり、長期の限月について流動性があるわけではありません)。制度的にはユーロ円金利先物のオプションもありますが、こちらについては全く流動性がありません。ユーロ円金利先物の流動性が上がらない(と筆者が考える)最大の理由は、日本では長年低金利政策が実施されていることから、そもそも短期金利に変動がなく、それをヘッジするニーズが相対的に少ない点です。図表5はユーロ円金利先物の1日の平均取引高(枚)を示していますが、ユーロ円金利先物の導入以降、数年間は売買が拡大していきましたが、低金利政策に伴い売買が低下していきます。量的緩和解除以降、再び売買が増加していきますが、2009年以降再度低下していき、足元ではほとんど売買がされていない状況が続いています。我が国の金利先物の歴史をみると、様々な先物の上場を試すものの流動性が向上せず停止することが少なくありません。例えば、6か月円LIBORを原資産とする「LIBOR6か月金利先物」を2012年1月に上場させていますが、その後取引高がゼロの状態が続き、*23) 「円金利先物、3年後までの価格を提示 東京金融取引所」(日本経済新聞、2013/12/24)を参照。2014年から売買を停止しています。円金利スワップ先物も、2003年に上場しましたが、2007年に休止しています*23。我が国で先物の流動性が生まれないことは金利先物だけでなく、国債先物でも見られています(例えば超長期国債先物は日本取引所グループが度々上場を試みるものの流動性がない状況が続いています)。国債先物に比べ、金利先物の場合、特に短期金利を原資産としているため、2000年以降、基本的には緩和的な金融政策が続いている中、短期金利が変化するリスクは少なく、金利先物を取引する需要は相対的に低い状況が続いています。そもそも上場した先物の流動性が上がらないこと自体は様々な国で見られています(海外の事例は次回の論文で取り上げる予定です)。ユーロ円金利先物の別の問題は、価格そのものが短期的にデジタルな動きをするなど特徴的な動きをすることがある点です。確かに長期的なトレンドをみると国債の3か月金利とユーロ円金利先物の間には高い相関がありますが、短期的には不規則な動きをする傾向が見られます。そのため、証券会社のトレーダーなどマーケット・メイカーにとってユーロ円金利先物は、例えば短期国債のマーケット・メイクや入札時におけるヘッジ手段として使いにくいと考えることも少なくありません。このように流動性に問題を抱える我が国の金利先物ですが、我が国では無担保コール翌日物金利(Tokyo OverNight Average rate, TONA)がLIBORの代替金利として特定されたことから、TONAを原資産とした金利先物(無担保コールオーバーナイト金利先物)の図表5 ユーロ円金利先物および同オプションの取引高(枚)の推移0200,000150,000100,00050,0001989199119931995199719992001200320052007200920112013201520172019(枚)(出所)東京金融取引所先物先物オプション47 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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