ファイナンス 2022年1月号 No.674
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1,250円と記載していますが、最小呼値に基づいたTFXの記載を用いています)。この関係を簡単な数値例で確認します。例えば、現時点で先物金利が1%であったとして、読者が1枚だけロングしたとします。翌日、仮に1.01%へ金利が上昇した場合、(金利と価格は逆の動きをするため)先物の買い手は損失を計上することになります。具体的には、ユーロ円金利先物の場合、将来の3か月間を予約する取引でしたから、3か月後において、本来は1%であった金利が、1.01%に上昇したと理解できます。ユーロ円金利先物の想定元本は1億円であり、金利の計算がAct/360であることに注意をすると、100,000,000×(1%×90360-1.01%×90360)=-2,500という形で1bps金利が動いた時に2,500円だけ機会損失が発生することが確認できます。金利が固定される期間が3か月であることから、デュレーションを0.25とすれば、金利が1bps上昇した場合、1億円×0.25×1bps=△2,500円という形で確認することもできます(デュレーションやこの計算の詳細については筆者が記載した「金利リスク入門」を参照してください)*15。最終取引日は限月の第3水曜日の2営業日前です*16。限月の設定については3、6、9、12月ですが、*15) Bloombergを用いてユーロ円金利先物のDV01(BPV)を評価すると、1枚当たりのDV01(BPV)は2,500円と表示されます。1枚1億円であることを思い出すとデュレーションは0.25になります。デュレーションやDV01は服部(2020b)を参照ください。*16) 国債先物(ミニ取引を除く。)の取引最終日は、受渡決済期日(各限月の20日(休業日に当たるときは、順次繰り下げる。))の5日前(休業日を除外する。)の日となります。*17) 最終決済価格は小数点以下第3位(0.1ティック)まで計算されます。計算にあたっては、TIBORの小数点第4位を四捨五入し、100から引いた値が最終決済価格となります。*18) この例はTFXのWebサイトに記載されている例を用いています。*19) 先物では限月についてF(1月)、G(2月)、H(3月)、J(4月)、K(5月)、M(6月)、N(7月)、Q(8月)、U(9月)、V(10月)、X(11月)、Z(12月)が用いられます。*20) YE2 Comdtyは直近限月の翌期を繋いだジェネリックのティッカーになります。20限月(5年間)設定されています。例えば、2022年3月限については、取引開始日は2017年3月14日であり、取引最終日は2022年3月の第3水曜日の2営業日前になります。取引時間については、「8時45分から11時30分」および「12時30分から15時30分」に日中取引があり、「15時30分から20時00分」が夜間取引になります。前述の取引最終日まで転売又は買戻しが行われなかった場合は差金決済がなされますが、その際は「最終決済価格」が用いられます。最終決済価格は、「100-TIBOR」で定義されます*17。例えば、取引最終日のTIBORが0.12786%であれば、ユーロ円3ヵ月金利先物の最終決済価格は、99.872(100-0.128%=99.872)になります*18。筆者の「日本国債先物入門」で記載したとおり、値洗い(Mark to Market)は金融先物の重要な特徴ですが、ユーロ円金利先物では取引日ごとに清算価格を定め、その清算価格に基づき、すべての建玉を時価評価します。清算価格はその日の約定価格と取引数量で加重平均した値が用いられます。実務家はブルームバーグを使うことが少なくありませんが、ユーロ円金利先物についてはYEというコードがあり、限月であるH(3月限)、M(6月限)、U(9月限)、Z(12月限)と組み合わせて用います*19。例えば、2019年6月限であるとYEM19、2021年12月限であるとYEZ1というティッカーがあります。YE1は中心限月を繋いだティッカーです*20。なお、ブルームバーグ端末で「YEA Commodity CT」を叩くと、限月一覧で色分け(前述の配色コード)されて表示されます。3.2 ユーロ円金利先物を用いた予約の事例ここから、ユーロ円金利先物について数値例を用いて考えてみます。例えば、現時点が7月1日であり、9月限のユーロ円金利先物を購入するケースを考えます。現時点での金利先物の価格は98円とします。こ図表3 ユーロ円3ヵ月金利先物の商品性取引対象全銀協 ユーロ円TIBOR3ヵ月取引単位元本 1億円価格の表示方法100から年利率(%、Act/360)を差し引いた数値最小変動幅(価値)0.005(1,250円)限月設定四半期毎の限月(3・6・9・12月限)を20限月(5年)四半期限月以外のシリアル限月を直近2限月取引最終日限月第3水曜日の2営業日前最終決済日取引最終日の翌営業日最終決済方法差金決済最終決済価格は小数点以下第3位(0.1ティック)まで計算されます。計算にあたっては、取引最終日に公表されるTIBORの小数点第4位を四捨五入し、100から引いた値が最終決済価格となります。(出所)東京金融取引所ウェブサイトより筆者作成45 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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