ファイナンス 2022年1月号 No.674
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して施行していく必要がある。・ 雇用主サイドに対する短期雇用濫用防止のための施策であるボーニュス・マリュスはその参照期間が開始しており、それと両輪を成す参照日額賃金(SJR)の計算方法の厳格化も施行すべきである。・ 失業保険改革の実施と同時並行的に求職者への職業訓練のために前例を見ない投資を実施している。このパブリックコメントに付された案のとおり、政府は施行が遅れていた失業手当額計算方法法の厳格化を10月1日から施行した*24。労働組合が未だ反発をする中、また国務院において実体審理や新たな急速審理が引き続き行われる可能性が残る中で、政府は夏前の宣言通りに正面突破を図ったと言えるだろう。7労働組合、最後の抗戦大手労働組合CFDTのローラン・ベルジェ書記長は「我々はこの改革を突っぱねる努力を再度行うつもりだ」と抗戦の構えを見せる。労働組合側は、2021年10月5日の全国規模での抗議デモに引き続き、10月8日には、主要組合(CFDT、CGT、FO、CFE-CGC、Unsa、Solidaires、CFTC)連名で、急速審理による差止めを求める請求をみたび国務院に提出した*25。11月5日には新ルールの下での参照日額賃金(SJR)に基づいた手当支給が開始される、という期限が迫る中で、労働組合側は最後の抗戦に出たのである。差止め請求の理由としては、引き続き就労時の総労*24) https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000044126002*25) https://pste.cfdt.fr/portail/pste/actualites/-emploi-la-cfdt-conteste-de-nouveau-devant-le-conseil-d-etat-la-reforme-de-l-assurance-chomage-srv1_1200299*26) https://www.conseil-etat.fr/actualites/actualites/assurance-chomage-les-nouvelles-regles-de-calcul-de-l-allocation-ne-sont-pas-suspendues働時間・総賃金が同一であっても就労期間の散らばり方次第で失業手当額に不平等が生じることをあげる。それに加えて、経営者サイドに負担がかかるボーニュス・マリュス制度については(大統領選挙後の)2022年9月からしか実際の保険料の傾斜が実行されないという「事実上の施行延期」が図られており、被用者サイドには即時に負担を求めることは整合性が取れない、としている。労働組合側から見ると、政府は経営者サイドにより大きく譲歩しているのではないか、と映っていたことがこの理由にあらわれている。8国務院の青信号と雇用指標条項の充足(完全施行)国務院は2021年10月22日、失業手当支給額計算方法の厳格化(ニ)に対する労働組合による差止め請求を却下した*26。雇用情勢が好転したことを理由に、政府に対して「青信号」を出したことになる。こうして、2019年夏に政府がとりまとめた失業保険改革パッケージに盛り込まれていたすべての改革項目が、コロナ危機発生後に生じた幾多のハードルを乗り越えて、動き出すこととなった。同時並行的に、2021年9月末の段階で、a)直近6ヵ月の失業者数が13万人以上減、b)新規採用数の4ヵ月累積値が270万人超という二つの「雇用指標条項」は充足されるに至った。a)の指標については23.9万人の減少、b)の指標については327.6万人と、いずれも条項が定めていたハードルを悠々と超える好調な数字となったのである。これを受け、フランス労(図2)カテゴリーAの求職者の推移3,000.03,200.03,400.03,600.03,800.04,000.04,200.04,400.04,600.02017年5月2017年8月2017年11月2018年2月2018年5月2018年8月2018年11月2019年2月2019年5月2019年8月2019年11月2020年2月2020年5月2020年8月2020年11月2021年2月2021年5月2021年8月4,800.0(出典)フランス労働省調査研究統計局(DARES)37 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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