ファイナンス 2022年1月号 No.674
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機構(Unédic)が、この点については検証を行っており、2006年以降でみると、2019年2月~3月、2019年9月~2020年2月、2020年10月単月においては両指標が充足されていたとする*5。感覚的にはコロナ危機発生直前、マクロン政権の下で雇用情勢は改善していると多くの経済関係者に認識されていた時期の状態に戻ることができれば、これらの厳格化項目が施行となるイメージであろうか。a)の基準が充足されるためには、雇用情勢が短期間に相当程度回復することが必要である。仮に長期間をかけてじりじりと改善した場合には基準が充足しなくなってしまう点に留意が必要である。a)とb)の基準が充足されたことを確認したのち、政府はその時点から3か月以内の日を施行日とする施行省令を策定しなければならない。このようにして決定された施行日の少なくとも1か月前に、どちらかの基準が満たされなくなった、ということがない限りこの基準に依っている制度は施行されることとなる。このほか、コロナ危機の影響への配慮として、ボー*5) カテゴリーAの求職者に関して、13万人減少という基準の裏側には、経済好転に伴う4.5万人減少と行政措置により休業しているセクターの再開による8.5万人の減少があり、失業保険管理機構(Unédic)の検証は前者の4.5万人を用いている。*6) 具体的には、「連帯基金」という危機対応のための給付制度の支給対象の範囲・規模を決めるためのセクターのリストを援用。ニュス・マリュス制度(イ)について、「導入」の姿勢を政府は保ったものの、その対象分野に関しては、コロナ危機の影響に配意した除外を設けることとしている(表3)。一連の改革の中でボーニュス・マリュス制度の対象とされた「7つの大分野」の中でも、コロナ危機の影響を強く受けているとされる小セクター*6については、少なくとも最初の1年間は制度の適用が除外されることとされている。(3)政府裁定における施行日等の日程イメージ以上の様々な要素を踏まえると、2021年3月の政府裁定が描く失業保険改革の施行日等の日程イメージはその時点においては以下図1のとおりだった(ただし、5以降に述べる動きに伴い、のちに変更を余儀なくされることとなる)。3政府裁定後の改革全体の財政影響2021年3月に政府裁定が出された後に失業保険管理機構(Unédic)が試算をしたところによると、改(表3)ボーニュス・マリュス制度の導入対象から時限的に除外される分野対象となる7つの大分野除外対象となる小セクター(上段)除外となる企業割合(下段)除外となる従業員数食品・飲料・たばこ製品製造「ワイン製造」、「ワイン醸造」、「その他の発酵飲料」1%3%運輸・倉庫業旅客輸送、スキーリフト27%22%宿泊・ケータリング「その他の宿泊」及び「その他の飲食サービス」を除くすべて96%94%木工・製紙業・印刷業なし―ゴム・プラスチック製品及びその他非金属製品製造なし―水の供給、衛生、廃棄物管理及び浄化なし―その他の専門的、科学的、技術的活動「メディア広告公社」、「写真に関する活動」、「翻訳・通訳」14%16%(出典)フランス政府公表資料より筆者作成(図1)政府裁定における施行日等のイメージ2022年11月1日改革全体を規定している時限政令の終期ボーニュス・マリュス制度(イ)に伴う保険料負担傾斜の開始2022年9月1日202Y年Y月Y日202X年X月X日雇用情勢にかかる二つの基準(求職者数、採用数)の充足・失業手当受給要件の厳格化(ロ)・受給資格の再充填の厳格化(ハ)・逓減制(6か月経過後)(ホ)・ボーニュス・マリュス制度(イ)の参照期間・失業手当支給額計算方法の厳格化(ニ)・逓減制(8か月経過後)(ホ’)2021年7月1日3か月以内施行施行33 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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