ファイナンス 2022年1月号 No.674
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3国際通貨金融委員会(IMFC) (2021年10月14日)国際通貨金融委員会(注)においては、世界経済の動向や新型コロナウイルス等に関してIMFに期待する政策対応について議論が行われた。特に世界経済については、声明において、ワクチンへのアクセスと政策支援の相違を背景に、経済間のばらつきが根強く残っているとの認識が示されたほか、変異株の発生により不確実性が高まり、回復の下方リスクが増大していることが指摘された。(注) 国際通貨・金融システムに関する問題についてIMFに助言及び報告することを目的として1999年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第44回目。日本から発出したステートメントにおいては、ワクチンの普及により世界経済は危機脱却に向けて確実に進んでいるものの、蓄積した政府債務などの様々なリスクや不確実性が大きく残っていること、日本経済は持ち直しの動きが続いており、新政権の下で成長と分配の好循環を実現し、ポストコロナの新しい社会を開拓することを述べた。また途上国支援の強化について、先述のSDR新規配分について、SDRの使用における透明性・説明責任向上のための手当が導入されたことを歓迎した。新規配分されたSDRの活用については、日本からPRGTに対して、融資原資に昨年4月に将来行うと位置付けていた26億ドルを含めて約40億米ドル、利子補給金に8,000万米ドルの追加貢献を表明し、引き続きトップドナーとして責任を果たす旨述べたほか、大災害抑制・救済基金(CCRT)に対しても、2020年の1億米ドルの貢献に加え、新たに5,000万米ドルの追加貢献を行った旨述べた。RSTについては、中長期の構造的課題に対応するものであり、新設にむけたIMFの検討を歓迎した。4世界銀行・IMF合同開発委員会(DC) (2021年10月15日)世界銀行・IMF合同開発委員会(注)においては、将来の危機に対する予防・備え・対応や環境に配慮した強靭で包摂的な開発に向けた世界銀行グループの支援等について議論が行われた。(注) 開発をめぐる諸問題について、世界銀行・IMFに勧告および報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第104回目。日本国ステートメントにおいては、一刻も早い危機からの脱却と次の保健危機への備えの強化を図るとともに、人的資本への投資、気候変動問題への対応、サイバーセキュリティに配慮したデジタル開発の促進、債務の透明性・持続可能性の確保を通じて、包摂的で持続可能な復興を達成することの重要性を強調した。現下の危機からの脱却と次なる保健危機への備えの強化に関しては、保健と財務の双方の知見を有する世界銀行グループの役割を強調するとともに、「保健危機への備えと対応に係るマルチドナー基金(HEPRTF)」のスケールアップを通じた途上国政府の能力強化や医療設備・機材の整備等の支援、国際金融公社(IFC)のGlobal Health Platform(GHP)を通じた途上国向け医療物資の製造・供給能力強化等への支援を行っていく考えを表明した。人的資本の強化の観点からは、乳幼児の発育不全や免疫低下のリスク低減、非感染症疾患のリスク低減を含め、栄養の側面も考慮したUniversal Health Coverageの推進の重要性を指摘し、12月に日本が主催する栄養サミットに向け、栄養分野において世界銀行グループと連携して途上国支援に貢献していく旨を表明した。気候変動問題への対応については、「国際開発金融機関(MDBs)のエネルギー支援に係る日本の提案」(概要下記)を、世界銀行・IMF合同開発委員会にあわせて公表し、日本としての考え方を述べた。加えて、世界銀行の信託基金への拠出等を通じて再生可能エネルギー等の気候変動への支援を行う旨を表明するとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿って金融機関が自主的な気候関連の情報開示を進められるよう技術支援を行うため、IFCに設置した日本信託基金を通じた支援を行う旨、表明した。「MDBsのエネルギー支援に係る日本の提案」概要○国際社会全体として1.5℃目標を達成するためには、途上国、とりわけ主要排出国において温室効果ガスの最大限の排出削減を推進する必要。29 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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