ファイナンス 2022年1月号 No.674
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て、「強靭性・持続可能性トラスト(RST)」の設立が要請された。(注) 国際的な流動性を創出するため、IMFが創出し、加盟国に配分する合成通貨。配分されたSDRは、SDR金利を支払うことで米ドル等の自由利用可能通貨に交換可能。低所得国の債務問題については、2020年11月に合意された債務救済に関する「共通枠組」について、適時に実施するための取組を強化して債務国に一層の確実性を与えるとともに、IMFなどの資金支援の迅速な提供を促進することに合意した。また低所得国の債務状況の透明性を高める観点から、債務データの質・整合性の強化に向けた取組を行っていくことが確認された。気候変動に関しては、グリーンで持続可能な経済社会を金融面から支えていくため、サステナブル・ファイナンスに関するロードマップが承認された。本ロードマップは、2021年4月に作業部会に格上げされたサステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)において作成されたものであり、続いて開催されたG20サミットでも承認された。また、日本からは世界銀行等の国際開発金融機関(MDBs)のエネルギー支援について、新規の石炭火力支援を停止するとの方針を支持するとともに、天然ガス支援を含む、温室効果ガスの排出削減のための現実的な支援を行う必要性を強調した(MDBsのエネルギー支援に係る日本の考え方の詳細については、後述の世界銀行・IMF合同開発委員会の項を参照)。最後に、金融セクターについては、マネー・マーケット・ファンド(投資ファンド等のノンバンクが提供する金融商品の一種)の強靭性強化のための政策オプションや金融技術革新について議論が行われ、これらに関する金融安定理事会(FSB)の報告書が承認された。2G7財務大臣・中央銀行総裁会議 (2021年10月13日)G7については、議長国イギリスの下で、昨年6月にロンドンにて開催されて以来、2回目となる対面形式での会議を行った。今回のG7においては、気候変動、グローバルサプライチェーン、デジタル・ペイメントや中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する議論が行われた。気候変動については、10月末から開催されるCOP26を前にして、経済に対する影響や政策対応について議論された。日本からは、全ての主要排出国がネットゼロ目標に向け効果的な対策をとる必要があることを述べた上で、目標の実現に向けた政策手段は国ごとに異なることを指摘し、政策強度の比較可能性を向上させる必要があることを述べた。新型コロナウイルス感染症の影響で顕在化した、グローバルサプライチェーンの課題についても意見交換が行われ、日本からは経済安全保障の観点も踏まえ、サプライチェーンの強靭化の必要性を指摘しつつ、保護主義化が進むことのないよう留意するべき旨指摘した。また今回のG7では、中央銀行デジタル通貨とデジタル・ペイメントに関する声明が発出されるとともに、「リテール中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する公共政策上の原則」について合意された。この「原則」は、昨年6月のG7声明にて公表に向けた作業が合意されていたものである。CBDCについては、2020年10月より通貨・金融システムの安定や、金融包摂、法の支配などといった論点について議論が重ねられてきた。今回の「原則」では、これらの重要性を改めて確認しつつ、中央銀行の権限にとどまらない幅広い公共政策上の課題について、中央銀行と財務省が協働し、G7内外の各国が検討を行う上での指針を示すものとなっている。主な項目としては、金融システムの安定、ガバナンス枠組、データプライバシー、サイバーセキュリティー等の重要性が掲げられている。またG7の声明においては、いかなるグローバル・ステーブルコインも、法律・規制・監督上の要件に十分に対処するまではサービスを開始するべきでないとの従来の合意についても再確認された。通貨のデジタル化という国際通貨・金融秩序に関わる重要分野において、中央銀行と財務省が協働して議論を重ねながら、こうした原則の合意に至ったことは大きな成果であり、G7の内外において指針となるこの原則が、途上国等にも参照されるように、IMFなどの国際機関とも連携していくことが重要であると考える。 ファイナンス 2022 Jan.28IMF・世界銀行グループ年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要SPOT

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