ファイナンス 2022年1月号 No.674
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2021年10月11日から10月17日にかけて、国際通貨基金(IMF)・世界銀行グループの年次総会がアメリカ・ワシントンDCにて、対面とオンラインのハイブリッド形式で開催された。これに併せてG20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議も同期間に開催された。以下本稿では、これら一連の会議における議論の概要を紹介したい。1G20財務大臣・中央銀行総裁会議 (2021年10月13日)今回のG20はイタリア議長下における4回目の大臣級の会議であり、2021年7月9日、10日にベネチアにて開催されて以来、2回目となるハイブリッド形式での開催となった。会議においては、世界経済、パンデミックへの対応、国際課税、低所得国・脆弱国支援、気候変動対応、金融セクターといった幅広い課題について議論が行われ、これらを踏まえて声明が発出された。以下G20における成果について紹介したい。まず世界経済について、ワクチンの普及等により強固なペースで回復が継続しているものの、各国間・各国内での回復の進展に大きな差異があり、変異株の拡大などの下方リスクが存在しているとされた。特に女性、若者などの最も影響を受けた人々や不平等に対処するため、必要とされる間は全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意が再確認された。パンデミックへの対応について、将来のパンデミックへの予防、備え及び対応を強化するため、財務省・保健省間の連携体制の発展を含めて議論することが合意された。G20に引き続いて、10月29日には3回目となるG20財務大臣・保健大臣合同会議が開催され、「G20財務・保健合同タスクフォース」の設立が合意された。この合同会議は、財務・保健の両当局間の連携強化を推進するため、2019年の日本議長下にて初めて開催されたものであり、今回の合意は日本による継続的な取組の成果であると言える。日本が継続的に国際的な議論を主導してきた分野として、もう一つ欠かすことのできないのは、国際課税である。国際課税については、「BEPS包摂的枠組み」において議論が進められ、10月8日に2つの柱による解決策からなる「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する国際合意」がなされたところ、今回の会議においてG20としてこの最終的な合意を支持することとなった。この歴史的合意への支持が表明されたことで、2023年の新たな課税ルールの発効に向けたモメンタムが確認されたことは大きな成果である。低所得国・脆弱国支援に関しては、大きく分けてIMFを通じた脆弱国支援と、低所得国の債務問題の2点について議論がなされた。前者については、昨年8月に新規配分された6500億ドル分の特別引出権(SDR)(注)について議論が行われた。新たに配分されたSDRは、IMFの全加盟国に対して、IMFへの出資割合に応じて分配されるため、低所得国に配分されるのは全体の約3%に留まっている。これを受け、先進国等に配分されたSDRの一部を、支援の必要な低所得国等に自発的に融通する枠組みについて議論が行われた。こうした融通の一環として、低所得国向け支援の既存の枠組みである「貧困削減・成長トラスト(PRGT)」の融資能力拡充について合意されたほか、IMFに対して保健・気候変動などの長期的課題に対応するための新たな基金としIMF・世界銀行グループ年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要(2021年10月11~17日、於:アメリカ・ ワシントンD.C.)国際局国際機構課長 飯塚 正明/国際局国際機構課 明石 悠誠国際局開発機関課長 田部 真史/国際局開発機関課 三浦 駿人27 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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