ファイナンス 2022年1月号 No.674
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(図10)中東地域に対する貿易収支▲0.8▲0.6▲0.4▲0.20.00.20.40.60.81.02019年度2020年度2021年度(兆円)2019年1月4月7月10月2020年1月4月7月10月2021年1月4月7月収支輸出輸入(出所)財務省「貿易統計」(3)アジア地域に対するサービス収支(図11)のとおり、アジア地域に対する2021年第2四半期までのサービス収支は、訪日外客数の低迷が続く中、旅行収支が未回復であることを主な要因として、サービス収支はコロナ禍発生前の水準に回復していない。(図11)アジア地域に対するサービス収支▲0.3▲0.1+0.1+0.3+0.5+0.72019年度2020年度2021年度(兆円)2019 Q1Q2Q3Q42020 Q1Q2Q3Q42021 Q1Q2サービス収支旅行収支(4)中南米地域に対する第一次所得収支(図12)のとおり、中南米地域に対する2021年第2四半期までの第一次所得収支の黒字額は、2020年度と概ね同水準であり、コロナ禍発生前の水準には回復していない。(図12)中南米地域に対する第一次所得収支0.00.20.40.60.81.01.22019年度2020年度2021年度(兆円)2019 Q1Q2Q3Q42020 Q1Q2Q3Q42021 Q1Q2証券投資収益直接投資収益第一次所得収支他方、(図13)のとおり、全世界に対する第一次所得収支は、概ねコロナ禍発生前の水準に回復しており、中南米地域に対する第一次所得収支が回復していないのは、何らかの個別要因に起因する可能性があることには留意が必要である。(図13)対全世界の第一次所得収支0.01.02.03.04.05.06.07.02019 Q1Q2Q3Q42020 Q1Q2Q3Q42021 Q1Q2(兆円)2019年度2020年度証券投資収益第一次所得収支直接投資収益2021年度▪おわりにこれまで見てきたとおり、コロナ禍発生前後の日本の経常収支の主な変化のうち、(1)米国に対する貿易収支、及び(2)中東地域に対する貿易収支については、コロナ禍発生前の状況に概ね戻しているが、(3)アジア地域に対するサービス収支、及び(4)中南米地域に対する第一次所得収支については、コロナ禍発生による悪化から回復するには至っていない。総じていえば、各国によるコロナ禍への対策が講じられ、経済・社会活動の再開が模索されるなか、モノの動きを示す貿易面では一定の回復が見られる一方で、ヒトの動きの面では、未だ回復に至っていない部分がある、という姿を示している。本稿執筆時点では、エネルギー価格の高騰、半導体の供給懸念やサプライチェーンの制約といった新たな問題が指摘されており、本邦事業者の活動や内外の投融資行動にも影響を及ぼしている。これらの影響を含めた経済・社会の動向を把握するため、日本の対外取引を映す経常収支を分析することは、有効な手段の一つであると考える。※ 本稿に記した見解は筆者個人のものであり、所属組織の見解を示すものではありません。(了) ファイナンス 2022 Jan.22新型コロナウイルス感染症拡大前後の経常収支の変化 SPOT

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