ファイナンス 2022年1月号 No.674
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2.3 第一次所得収支(図8)は、日本の第一次所得収支の黒字額2.6兆円の減少の内訳を地域・国別に表したものである。この中で増減額が大きいものは、(4)中南米地域に対する1.2兆円の黒字額の減少である。(4) 中南米地域に対する第一次所得収支の 変化の要因(表6)のとおり、中南米地域に対する第一次所得収支の黒字額が1.2兆円減少した主な内訳は、直接投資収益の0.9兆円の黒字額減少、次いで証券投資収益の0.4兆円の黒字額減少である。中南米地域との対外取引の特徴の一つとしては、当該地域内にあるケイマン諸島には、各国の投資家等により多くの法人・団体及び投資ファンドが設立・登記されており、これらに対して本邦からも直接投資や証券投資が盛んに行われている点が挙げられる。コロナ禍発生後の投資先の業績等の変化を受け、中南米地域に対する投資への配当等の収益が減少したことが、同地域に対する第一次所得収支の黒字額が減少した要因の一部であったと考えられる。(表6)中南米地域との経常収支(兆円)項 目2019年度2020年度増減経 常 収 支2.90.8▲2.1貿 易 収 支▲0.4▲1.0▲0.6サービス収支▲0.7▲0.8▲0.1第一次所得収支4.33.0▲1.2直接投資収益1.50.6▲0.9証券投資収益2.62.1▲0.4第二次所得収支▲0.2▲0.4▲0.2(図8)日本の第一次所得収支の地域・国別の内訳(2019→2020年度の増減)▲2.6▲0.5+0.0 ▲0.5▲1.2▲0.4+0.5 ▲0.1▲0.1▲0.3▲3.0▲2.5▲2.0▲1.5▲1.0▲0.5+0.0+0.5+1.0黒字減少21.4兆円→18.8兆円黒字減少4.3兆円→3.0兆円(4)(兆円)全世界計アジア(除中国)中国米国中南米大洋州欧州中東アフリカその他3足元の状況これまで、コロナ禍発生による経常収支の変化を検証するため、2019年度と2020年度について、地域・国別の経常収支に表れる特徴や背景を見てきた。次に、前述の2で確認した主な変化について、2021年度に入ってからの状況を見ていく。(1)米国に対する貿易収支(図9)のとおり、米国に対する2021年第2四半期までの貿易収支は、輸出の回復等によりコロナ禍発生前の水準に概ね回復している。他方、足元では、自動車部品用の半導体の供給不足や東南アジアの工場閉鎖に伴う部品不足の影響等から、自動車を中心とした米国への輸出は、2021年8月以降は頭打ちとなり、貿易収支も若干縮小している。(図9)米国に対する貿易収支0.00.20.40.60.81.01.21.41.62019年度2020年度2021年度(兆円)2019年1月4月7月10月2020年1月4月7月10月2021年1月4月7月収支輸出輸入(出所)財務省「貿易統計」(2)中東地域に対する貿易収支(図10)のとおり、中東地域に対する2021年第2四半期までの貿易収支の赤字額は、原油価格上昇等により拡大傾向にあり、コロナ禍発生前の水準に概ね戻している。21 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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