ファイナンス 2022年1月号 No.674
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(1)米国に対する貿易収支の変化の要因米国に対する貿易黒字が何故、コロナ禍発生前後で大幅に縮小したのかを見てみよう。(表2)のとおり、2019年度から2020年度にかけての貿易黒字額の減少は、2.4兆円の輸出額の減少(16.2兆円→13.8兆円)が主な要因である。この輸出額の減少を品目別で見ると、(表3)のとおり、輸送用機器及び一般機械の輸出額の減少が減少額全体の約7割を占めている。これはコロナ禍発生後に経済活動が抑制されるなか、自動車の米国内販売台数が減少したこと(図3)や、原動機及び半導体製造装置を始めとした生産活動に密接に関連する品目の商流が滞ったことが大きな要因と考えられる。(図3)米国の自動車販売台数2019年度142万台/月2020年度128万台/月▲60▲40▲20020406080100020406080100120140160(出所)マークラインズ180120(万台)(%)販売台数(左軸)前年同月比(右軸)3月5月7月9月11月1月3月5月7月9月11月1月3月5月7月9月11月1月2019年2020年2021年(2)中東地域に対する貿易赤字の変化の要因次に、中東地域に対する貿易赤字が縮小した理由を分析する。中東地域に対する貿易赤字額の減少は、(表4)のとおり、3.7兆円の輸入額の減少(8.7兆円→5.0兆円)が主に寄与している。中東からの輸入額減少の背景としては、2020年度は原油価格が大幅に(図2)日本の貿易収支の地域・国別の内訳(2019→2020年度の増減)+3.4 +0.3 +0.7 ▲1.4▲0.6+0.8 +0.5 +3.3 ▲0.1▲0.1▲0.5+0.5+1.5+2.5黒字増加0.5兆円→3.9兆円黒字減少8.3兆円→6.9兆円(1)赤字減少▲6.9兆円→▲3.6兆円(2)▲1.5+3.5(兆円)全世界計アジア(除中国)中国米国中南米大洋州欧州中東アフリカその他(表2)米国との経常収支(兆円)項 目2019年度2020年度増減経 常 収 支11.49.7▲1.7貿 易 収 支8.36.9▲1.4輸 出16.213.8▲2.4輸 入7.96.8▲1.0サービス収支▲2.0▲1.70.3第一次所得収支5.75.2▲0.5第二次所得収支▲0.6▲0.7▲0.1(表3)米国への輸出額(兆円)2019年度2020年度増減輸出総額14.912.4▲2.5輸送用機器5.44.4▲1.0一般機械3.52.8▲0.7電気機器2.01.8▲0.2原料別製品1.00.8▲0.2化学製品1.11.0▲0.1(出所)財務省「貿易統計」(注)貿易統計と国際収支統計とは計上基準が異なるため、計数が一致しない場合がある。(表4)中東地域との経常収支(兆円)項 目2019年度2020年度増減経 常 収 支▲6.8▲3.53.3貿 易 収 支▲6.9▲3.63.3輸 出1.81.4▲0.4輸 入8.75.0▲3.7サービス収支0.00.10.1第一次所得収支0.0▲0.0▲0.0第二次所得収支▲0.0▲0.00.019 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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