ファイナンス 2022年1月号 No.674
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▪はじめに本稿では、新型コロナウイルス感染症拡大(以下「コロナ禍」)による経済・社会の変容が、対外取引に及ぼした影響について、国際収支統計の経常収支、特に地域・国別の動向に焦点を当てて検証する。1コロナ禍発生前後の経常収支(図1*)のとおり、2017年度以降に緩やかに減少してきた日本の経常収支の黒字額は、コロナ禍発生後に更に減少した。(表1)のとおり、コロナ禍発生後に当たる2020年度(2020年4月~2021年3月)の日本の経常収支は、16.3兆円の黒字であり、コロナ禍発生前の2019年度の18.7兆円の黒字と比べると、2.4兆円黒字額が減少した。この変化について、経常収支を構成する内訳項目で見ると、貿易収支は黒字額が3.4兆円増加、サービス収支は赤字額が1.9兆円拡大、第一次所得収支は黒字額が2.6兆円減少している。2項目別、地域・国別の特徴これらの2019年度から2020年度にかけての項目毎の収支の増減を、貿易収支、サービス収支及び第一次所得収支の順番に、地域・国別に見ていく。2.1 貿易収支(図2)は、日本の貿易収支の黒字額3.4兆円の増加について、地域・国別の内訳を表したものである。この中で増減額が大きいものは、(1)米国に対する1.4兆円の黒字額の減少(8.3兆円→6.9兆円)と、(2)中東に対する3.3兆円の赤字額の減少(▲6.9兆円→▲3.6兆円)である。国際局 為替市場課 外国為替資金研究官 菊地 渉/同 国際収支専門官 松下 裕同 企画係長 坂本 晃一/同 国際収支第一係長 浅見 知佳同 辻本 大志/同 芹澤 花奈/同 益子 優輝新型コロナウイルス感染症 拡大前後の経常収支の変化(図1)日本の経常収支の推移(年度ベース)▲20302520151050▲5▲10▲15(兆円)第一次所得収支サービス収支経常収支貿易収支第二次所得収支2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度2017年度2018年度2019年度2020年度(表1)日本の経常収支(内訳項目)(兆円)項 目2019年度2020年度増減経 常 収 支18.716.3▲2.4貿 易 収 支0.53.93.4輸 出74.768.4▲6.4輸 入74.364.4▲9.8サービス収支▲1.7▲3.7▲1.9輸 送▲0.8▲0.70.0旅 行2.50.3▲2.2その他サービス▲3.4▲3.20.2第一次所得収支21.418.8▲2.6直接投資収益11.09.3▲1.7証券投資収益9.98.7▲1.2第二次所得収支▲1.5▲2.8▲1.3(注)一部の内訳項目を省略していること、及び各項目の金額は四捨五入した数値であることから、必ずしも合計額と一致しない。以下同じ。* (図)及び(表)のデータの出所は、記載がないものは財務省「国際収支統計」である。 ファイナンス 2022 Jan.18SPOT

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