ファイナンス 2022年1月号 No.674
19/96

また、今後の財政運営にあたっては、ケインズが、長期的な経済成長は技術革新や資本蓄積により実現するものとしており、主役である民間企業に不可欠なものとして「アニマル・スピリット」を挙げている点に触れた上で、重要分野であっても、安易な財政支出により、公的資金への依存を招いて民間の自主的なリスクテイクの意欲を失わせることがあってはならないと指摘している。2我が国財政をめぐる環境変化と対応余力の必要性(1)直面する3つの課題次に、我が国の財政が直面する3つの課題を、以下のとおり指摘している。第一は、社会保障の受益(給付)と負担のアンバランスである。2020年度からは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に移行し始めるため、医療費の増加等により、社会保障給付費の急増が見込まれる。全世代型社会保障改革により、これを是正し、国民が必要とする社会保障制度の持続可能性を高めることで、特に、現役世代の将来不安を払拭し、希望が持てるようにしていくべきとしている。第二は、短期国債の大幅な発行増である。昨年度の国債の市中発行額は、当初予定していた130兆円規模から210兆円を超える水準となった。特に短期国債の大幅な発行増で手当てすることになったため、令和3年度当初の市中発行額も約220兆円と引き続き高水準となっている。こうした短期国債の増加が、金利変動に対する脆弱性をもたらしていることが述べられている。第三は、諸外国に比べて不十分な財源確保や財政健全化に向けた動きである。我が国は債務残高対GDP比が諸外国に比べて格段に高い中で先に述べた例外的な対応をしているのにもかかわらず、財源確保や財政健全化に向けた十分な動きがあるとは言えないこと、※ 写真撮影時以外はマスクを着用。(榊原会長から鈴木財務大臣への建議手交。左から、小林毅委員、武田洋子委員、冨田俊基委員、土居丈朗委員、増田寛也会長代理、榊原定征会長、鈴木俊一財務大臣、大家敏志副大臣、高村正大大臣政務官、中空麻奈委員、田近栄治委員※。) ファイナンス 2022 Jan.14財政制度等審議会「令和4年度予算の編成等に関する建議」について SPOT

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る