ファイナンス 2022年1月号 No.674
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財政制度等審議会・財政制度分科会は、2021年10月から8回にわたって審議を行い、「令和4年度予算の編成等に関する建議」をとりまとめ、12月3日に鈴木財務大臣に手交した。本建議では、令和4年度予算編成の指針となるものとして、総論に加え、社会保障、地方財政をはじめとする10の歳出分野における具体的な取組が示されている。詳しい内容は建議本文をご覧いただくこととし、ここでは、特に財政総論の中でポイントとなる点をご紹介したい。1「例外」からの脱却(1) 新型コロナに対する当初の緊急的対応から「正常化」へまず、我が国は、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の感染拡大という緊急事態に直面し、経済面でも財政面でも「戦後最大の例外」とも言える状態となったと指摘されている。経済面では、ウイルスの性質が分からない中で飲食・旅行を中心に経済活動を制限せざるを得ず、昨年4~6月の実質GDP(国内総生産)が前期比で約8%(年率約28%)の下落という戦後最大の落ち込みを経験した。財政面では、事業者と家計に対してかつてない規模の支援を行うなど、昨年度に3次にわたる補正予算を編成し、一般会計だけで合計73兆円に上る歳出を追加した。こうした例外的な政策対応は、危機的状況の中で、国民の生活や事業を守るために大きな役割を果たしたが、過去最大の昨年度補正予算の追加額は、ほぼ国債の増発で賄われており、一般会計の歳出と税収の乖離の推移を示すいわゆる「ワニ口」グラフには、「巨大な角」が生えることになったとされている。そして、今後求められるのは、新たな変異株を含め再度の感染拡大への備えをしっかり行いつつ、ポストコロナの世界において我が国の経済社会が持続的に成長できるよう、コロナ禍に炙り出された多くの課題に目を逸らすことなく、改革に取り組むことであるとした上で、昨年来の対応を前例とすることなく、経済、財政の「正常化」に取り組み、「例外」から脱却することを求めている。(2)「正常化」の中で求められるもの今後、経済の「正常化」(新型コロナが感染拡大する前の状態に戻るだけでなく、民需主導の持続的な成長軌道を実現することを含む。)を確実に実現し、あわせて財政も「正常化」(新型コロナが感染拡大する前の状態に戻すだけでなく、プライマリーバランスの黒字化に向けて、財政健全化が着実に進んでいくこと。)させるため、以下の「3つの視点」から具体的な政策を立案すべきとしている。一つ目は、昨年来の新型コロナへの対応の経験を今後の対応に活かすことであり、あるべき医療提供体制に向けて、診療報酬をはじめ諸制度の見直しを幅広く進めることや、官民のデジタル化を推進することを求めている。二つ目は、家計・企業の現状を十分に注視し、経済活動のいわば「点火」に必要な政策を実行することであり、いわゆる「ペントアップ需要」をうまく解放に導き、企業の投資を促し、民需主導の自律的な経済サイクルを取り戻す必要があるとしている。三つ目は、ポストコロナにおいて経済社会を持続的に成長させるため、長年指摘されてきた生産性の向上や全世代型社会保障改革をはじめ、構造的な課題に取り組むことである。財政制度等審議会 「令和4年度予算の編成等に関する建議」について主計局調査課長 大沢 元一/課長補佐 山田 耕太朗調査第一係長 吉岡 拓野/同係員 田中 謙伍 野坂 匠13 ファイナンス 2022 Jan.SPOT

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