ファイナンス 2022年1月号 No.674
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大臣のおじいさまがご活躍していた海洋高校は数年前に120周年を迎えました。海洋高校がこの地にできたのは、良好な漁場がこの糸魚川にあって、その水産業をしっかり支えなければいけないからでしょう。これからも新潟の唯一の水産高校をしっかり盛り上げて、地域に根差した学校に育てていきたいと思っています。漁師が加工品の生産まで 一貫して取り組む体制を構築小野総括審議官 ありがとうございました。中村様、お願いします。中村船長 上越漁業協同組合能生支所所属の光洋丸の船長をしております中村です。私とおやじとおじさんの家族経営ですが、小型底引き船を利用して操業しています。漁業組合全体の問題として、後継者不足、高齢化、魚価安、原油の高騰の問題などを抱えています。とくに漁業は燃料をはじめ、道具、漁具等もほとんど原油でできていますので、原油の価格が上がると、経費が増えて経営が圧迫されます。漁業組合では、能生支所に自分たちの工場を造りました。魚を取るだけでなく、自分たちで加工品を作って販売していこうとの取組をはじめ、少しずつ稼働を始めています。私は新潟県の漁業士会の会長もしているのですが、コロナ禍で魚食普及の活動がなかなかできない中、新潟県の小学校・中学校を対象にオンラインで、漁師の映像などを見てもらい魚食普及教室などにも取り組んでいます。これからは、どれだけ魚が取れたか、どういう魚が上がっているかなどを漁師が直接ネットを通じて発信できたらと思っています。それによって魚の流通を円滑にできればと思っています。新しい生活様式に対応し 首都圏への販路を開拓小野総括審議官 ありがとうございました。小林様、よろしくお願いします。小林第18代蔵元 加賀の井酒造の小林です。先ほど鈴木大臣から糸魚川大火のお話をいただきましたが、弊社もあの大火で被災をして、事業がストップしてしまいました。その際には行政をはじめさまざまな方のご支援を頂いて1年と3カ月後に現在利用している新しい蔵を竣工して、2018年の春から酒造りを再開しました。私たちも飲食店さんに非常に近い業界ですし、また糸魚川に来てくださった方がお土産としてお酒を買ってくださるという意味では、非常にコロナの影響を受けています。2021年10月に緊急事態宣言が明けるまでは、2019年比で非常に厳しい状況でしたが、ここに来て少し好転してきています。やはりみなさんがコロナ禍の生活に慣れて、それが元に戻ることはないと私自身は感じています。そこで3、4カ月ほど前から首都圏に新たな販路を確保しました。今までとは違う展開で、とにかく会社を守っていこうと始めた取組ですが、その成果が今月から出始め11月単月で見ると、2019年を超えるぐらいの状況になっています。ただ、売れているものは価格の安いものなので、どうしても消費者の方に手に取ってもらえるものを出さざるを得ない状況になってきています。そうなると今まで以上にコストの部分で厳しく見ていかなければいけないということを考えると、かなり危険な仕事をしていると感じる部分もあります。ただ、私たちの場合は工場があって、物を作って販売してお金に換えることによって初めて事業が成り立っていますので、この部分はしっかり切り分けて考えていかなければいけないと考えています。その中で、中村さんもおっしゃっていたように、原上越漁業協同組合能生支所所属、底曳漁船・光洋丸 船長中村 浩 さん7 ファイナンス 2022 Jan.

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