ファイナンス 2021年12月号 No.673
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私の週末料理日記その4711月△日日曜日新々先日映画俳優の千葉真一氏の訃報を見て以来、週末に気が向くと、彼が出演した映画をネット配信で観ている。「柳生一族の陰謀」、「沖縄やくざ戦争」、「魔界転生」、「戦国自衛隊」、「将軍家光の乱心 激突」、「赤穂城断絶」ときて、昨晩は「必殺4 恨みはらします」と「仁義なき戦い 広島死闘編」の2本を観た。結果として今朝はずいぶん寝坊して、髭も坊主頭も剃らずに大あくびをしながら、急いでスーパーへ買い出しに行く。夕食用にチゲ鍋の材料一式を買う。昼飯は手早くベーコンとレタスのサンドイッチにしようかと思ったが、何となく心残りな気がしてもう一回りすると、魚介売場で生鮭が目に留まる。舞茸と長芋と一緒にバター醤油で炒めて、深まる秋の気分に浸ろうか、久しぶりに味噌汁でも作って…と、買い物を済ませて帰宅したのだが、家に戻って寝転んで新聞を読んでいたら、飯を炊くのが面倒になってきた。結局昼飯は鮭と舞茸と長芋の和風スパゲティ。それはそれで美味なのだが、麺類はどうしても食べすぎる。腹が重くてソファーから立ち上がれない。閑話休題。話を千葉真一に戻すと、日本を代表するアクション俳優であり、出演した映画、テレビドラマは数多い。代表作といえば「柳生一族の陰謀」、「魔界転生」、「戦国自衛隊」あたりか。前二者で千葉は野生味溢れる柳生十兵衛を演じ、「戦国自衛隊」では長尾景虎と組んで天下取りを狙う精悍な伊庭三等陸尉を演じている。アクション映画としての出来栄えもいい。これらが代表作だろうとは思うが、一番気に入っているのは「仁義なき戦い 広島死闘編」である。千葉はテキ屋の親分を父に持つ暴力団組長大友勝かつ利としを演じている。この千葉が演ずる大友勝利というのが、愚連隊的というか戦後ヤクザ的というか、とにかく欲望丸出しの粗暴極まりない男で、哀しき鉄砲玉というべき主人公の山中(北大路欣也)以上の強烈な印象である。この大友勝利役は千葉畢生の熱演といってよいのではないか。映画ではこの大友勝利が、広島で当時広島最大の暴力団になりつつある村岡組と事を構える。もともと村岡組は博徒であり、大友連合会はテキ屋であって、お互いの縄張りを守って友好関係にあった。昭和25年、村岡組は広島競輪場の警備を請け負うなど勢力を大きく伸ばしており、闇市時代からのマーケットの仕切りを業とする大友連合会との勢力の差は明らかであった。それが面白くない勝利は、競輪場の便所をダイナマイトで爆破する。昔気質の父大友長次(加藤嘉)は、テキ屋らしい筋目論で諫める。要約すると、「マーケットは村岡(名和宏)と二人で立ち上げたものだが、村岡は『マーケットは神農道の縄張りだ』と言って手を引いてくれた。(神農は露天商の守護神とされている。)競輪は博打打ちのシマだから手を出すな」というものだ。しかし、勝利はせせら笑って言うのである。(余りに下品な台詞なので一部伏字。)「…こぎゃなマーケット、何の役に立つんなら。見とってみないよ、今に物が自由に出回るようになったらど、客は誰も寄り付かんようなるわいよ。それに比べて競輪場いうたらよ、のう、年に十億の売り上げじゃけん。…何が博打うちじゃいや、ああ。村岡の持っちょるホテルは何を売っちょるの。淫買じゃないの。いうならあいつら×××の汁で飯食っとるんじゃないの。のう、親父さん、神農じゃろうと博奕打ちじゃろうとよ。わしらうまいもん食ってよ、まぶい△△抱くため生きとるんじゃないの。それも銭がなきゃできゃせんので。そうじゃけん、銭に体張ってどこが悪いの、おう」。激怒した長次は勝利を勘当するが、勝利は古顔の博徒である時森勘市(遠藤辰雄)の跡目を受けて大友組を結成し、村岡組との抗争に突入する…と物語は進行する。 ファイナンス 2021 Dec.71連載私の週末 料理日記

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