ファイナンス 2021年12月号 No.673
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させ、広域エリアに通信サービスを提供するシステムです。これが何機か飛んでいてくれれば、先ほどの国土カバー率60%という問題を100%にすることができますし、海もカバーできますので、特に災害のときは有効だと思います。6.締め切りと目標(1)世界のインターネット人口の推移デジタル庁を創設しようとなったとき、私は総理大臣に「締め切りと目標はトップが決めてください」というお話をしました。どういうことかと言うと、2000年に日本がデジタル政策を始めた時、世界のインターネット人口は6%で、まだ中国ではインターネットが使われておらず、アジアのインターネット人口のほとんどは日本でした。2020年12月には、世界のインターネット人口は63%になっています。北米100%、欧州90%で、これらの地域ではほとんどの人が使っています。アジアは約60%ですので、伸びしろはすべてアジアにあります。最新の2021年3月の世界のインターネット人口は65%ですから、ものすごい勢いで伸びています。アジアも59.5%から63.8%で4%も伸びて、もう世界の標準です。100%まで到達したカタールのような国もありますが、日本は人口比では低い状況です。では、いつ100%になるのかというと、どんな予測でも、せいぜい5年から10年で世界中の人は全てインターネットを使うようになると予測されています。したがって、締め切りはそんなに先ではありません。つまり、デジタル庁は、世界がこのペースで動いていくことを前提に、デジタルプラットフォームをつくることを考えないといけないということです。(2)COVID-19がデジタル社会を前倒しCOVID-19でデジタルトランスフォーメーションが話題になり、デジタル庁の創設につながるという背景がありますが、東京工業大学では、2019年に「未来シナリオ」というものを作成しています。そこでは、「みんながおうちで仕事ができるようになる」という「おうち完結社会」や、「ほとんどの仕事はオンライン化されて、旅をしながら働くようになる」、ということが示されていますが、これらは、COVID-19ですべて経験してしまいました。東京工業大学のこのプロジェクトは2040年の予測ですので、20年前倒ししたことになります。この2年間のグローバルパンデミックのインパクトは、私たちのデジタル社会の計画を10年、20年前倒ししたのです。(3)テレビのデジタル放送化の経験デジタルトランスフォーメーションは、日本で大成功したことがあります。若い方は知らないと思いますが、昔のテレビは、ブラウン管テレビで2011年7月24日にアナログをデジタルに切り替えるという法律ができました。法律をつくったときに私がいれば「そんな無茶なことあるか」と止めていたと思います。これらが決まった後にデジタル化への切り替えのための座長を引き受けたのですが、みんなが普通にテレビを楽しんでいるところに、「デジタル放送に切り替わることで、映像が綺麗になって、チャンネルの数が増えて、データ放送が利用可能になります」と言われても、誰も言うことを聞かないですよね。よくやったな、と思います。デッドラインの7月24日に100%やらなければいけないので、「インターネットが基盤になって、いろいろな人がプラットフォームとして利用できて、コンテンツも放送もよくなる」というようなことを、絵を描いたり、様々な方法を考えて説得しました。4,500万世帯全てのテレビをデジタル対応のものに変えるのは大変なことです。ホテルや旅館のテレビもあれば、病院のテレビもあります。デッドラインベースでデジタルトランスフォーメーションをするのは、かなり乱暴な話だと思いました。たくさん資料を作りましたし、毎週のように会議をして、対応を検討し、県別で競争もしました。前回16%だったけど今回は89%だった、あとちょっとだ、頑張れ、みたいな感じです。デットラインの7月24日の3日前、最後の会議の報告で、これまでどうやってきたかを報告したのですが、これを見てください。高齢者・障害者の未対応世帯をどうやって対応させるのか、そのために誰がどこ ファイナンス 2021 Dec.69夏季職員トップセミナー 連載セミナー

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