ファイナンス 2021年12月号 No.673
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Instituteはじめに私は、デジタル改革関連法案ワーキンググループで座長を務めていました。グループの代表としてIT基本法やデジタル庁設置への提言などを行い、今でもデジタル社会の実現を応援しているという立場です。内閣官房参与という役割を拝命していますが私自身がデジタル庁を代表しているわけではありませんので、期待を込めてプレッシャーをかける役割を果たしています。本日のタイトル「It’s now or never!」は、私の思いをそのまま言葉にしたものです。私は2000年から約20年間、有識者本部の一員として様々なIT政策に関わっていますが、デジタル庁の準備がここまでできるとは思いませんでした。いつも「こうしてください」と、大体高めのボールで、無理だろうなと思っているようなことをお願いしてきました。例えば、予算や権限もそうですし、総理大臣がトップの新しい役所をつくるというのもそうですが、それが今回、高めのボールを投げたら、そのとおりにできました。こういうことは滅多にないと思います。霞が関に新しい役所ができて、役割がきちんとできることは歴史的なことだと思っていますので「It’s now or never!」、今できなかったらもうできないだろう、という思いでいます。その高い期待値に関して、使命も含めてお話します。1.インターネットって何だ?(1)インターネットの原理コンピュータネットワーク分散処理が私の専門の研究課題ですが、そもそもインターネットとはなにか、ということを少しお話しておきます。1969年にARPANETのパケット交換ネットワークと、UNIXオペレーティングシステムの研究開発が始まり、1980年代の初頭に、この2つの技術がカリフォルニア大学バークレー校で合体してインターネットができました。その後、スイスのCERN(欧州原子核研究機構)の研究者であるティム・バーナーズ=リーが、1980年代の終わりにWorld Wide Webというメカニズムを作ります。これによってインターネット上のデータ情報が流通したり、アクセスするためのプラットフォームができました。1990年代で一番重要なのは、公開鍵暗号という暗号のメカニズムです。「https」の「s」はセキュリティの「s」ですが、これで、スマートフォンやパソコンのエンド端末から、相手のサーバーに情報を送るときに暗号化を両側でかけます。つまり、暗号をかけて、相手に届いたら復号する。例えば、クレジットカードの情報を流通しても、入力した端末からサーバーまでが暗号化されているので途中で見られても大丈夫です。この仕組みも要素としてWorld Wide Webの中に組み込まれていきます。「インターネット」、「Web」、「サービスプラットフォーム」の3つの要素が全部つながって世界中で標準化されています。したがって、その上で何かをやろうとしてもお金を払う必要がありませんので、この上にあらゆるサービスが生まれるようになりました。令和3年8月26日(木)開催夏季職員 トップセミナー村井 純 氏(慶應義塾大学教授/内閣官房参与(デジタル政策担当))デジタル庁の挑戦It’s now or never!演題講師64 ファイナンス 2021 Dec.連載セミナー

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