ファイナンス 2021年12月号 No.673
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PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 2大きいことが分かる。さらにこの推移を時系列で見ると、2000年には中国の割合が8%であったことから、ここ20年間でとくに中国においてこの分野が進展したことがわかる。学術論文の本数はあくまで数値化が容易な指標であり、これが自動化技術に関する分野の発展のすべてを表しているわけではないが、ここから全世界でこの分野が発展を続けていること、さらに中国がその発展を先導していることがわかる。次に、この分野の発展について、投資額の観点から見てみよう。AIへの投資は、既存企業、ベンチャーキャピタル、スタートアップ企業のいずれにおいても増加している。Bughin et al.(2017)によると、既存企業が2016年にAI関連プロジェクトへの企業内投資に費やした金額は、180億~270億ドルと推定されている。また、これらの既存企業は買収という形でもAI関連の投資を行っており、フェイスブック、グーグル、アマゾン、アップルは、過去10年間にAIやAI関連技術に特化したものを含む、多くの革新的な新興企業を買収しており、2016年だけでもAI関連のM&Aに20~30億ドルが支出されている。また、ベンチャーキャピタルからスタートアップへの投資も2013年から2016年の間に40%増加している。次に自動化技術の普及状況について見てみよう。ロ*9) 調べた限りではこの傾向変化に関する要因分析はまだ行われていない。ボットについての基本的な統計はInternational Federation of Robotics(国際ロボット連盟, IFR)によって毎年公表されている。図1は産業用ロボットに関する世界全体の年間導入台数の推移を表している。2010年代において、この産業が大きく成長した一方、ここ数年は伸びていないことが読み取れる。これを国別に見ると、ロボット導入数上位の国において、導入されるロボット数が増加していないことが世界全体で合計のロボット導入数が伸びていない要因であることがわかる。図2は国別のロボット導入数の推移を表している。2020年の世界全体の導入数がおよそ40万台であり、中国がその約40%を占めていることがわかる。その他、日本やアメリカ、韓国、ドイツは2万台から4万台の間である。時系列で見ると、とりわけ中国の導入数の増加が2018年から鈍化しており、さらに日本・アメリカ・韓国についても2018年より減少していることがわかる。中国のシェアが大きいために世界全体の推移も中国の動向に左右されていることは事実だが、導入数が伸びていないという傾向は中国に限った現象ではなく、日本を含む他の主要なロボット導入国で見られている。*9図2:産業ロボット導入数の推移(国別)中国日本アメリカ韓国01801601401201008060402020102011201220132014201520162017201820192020(1000台)(出所)International Federation of Robotics 2021 より筆者作成図1:産業ロボット導入台数(世界)04504003503002502001501005020102011201220132014201520162017201820192020(1000台)(出所)International Federation of Robotics 2021 より筆者作成 ファイナンス 2021 Dec.59連載PRI Open Campus

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