ファイナンス 2021年12月号 No.673
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当局によればこの措置によって、金融機関が不動産市場の変動に耐えられるよう強化し、システミック・リスクを未然に防ぎ、金融機関の健全性を高めるとしている。・不動産関連規制の影響上記のような政策のほか、各地方政府においても、中古物件の参考価格の設定、物件の複数購入の制限、企業の運転資金や消費者ローンの住宅購入への転用の監視など、様々な不動産市場の過熱抑制策が導入された。中国の不動産大手企業である恒大集団は1996年に設立され、不動産ブームに乗じて急成長した。ところが最近の不動産関連規制が影響し経営難となった。2021年6月時点の負債総額は1兆9,665億元(約33兆円)にまで膨らんでおり、社債の利払いや償還などについて問題視されているその他の不動産企業においても社債債務不履行(デフォルト)が相次いでおり、不動産市場の低迷による経済の減速が懸念されている。3.おわりに共同富裕を目指し、様々な規制策を導入して構造改革を進める一方で、それらが経済への重しともなっている。政府の規制によってIT・教育・不動産を含め、さまざまな産業や企業が打撃を受けている。市場では、中国政府の次の標的を警戒しており、過剰な規制は経済をさらに失速させる可能性がある。引き続き今後の政府の動向については注目されるだろう。【写真】浙江省杭州市の西湖を眺む筆者©2021福本企画(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。44 ファイナンス 2021 Dec.コラム 海外経済の潮流 137連載海外経済の 潮流

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