ファイナンス 2021年12月号 No.673
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(約3,000億円)の行政罰が科された。また、アリババ以外にも美団、テンセントなどに対し、相次いで独占禁止法違反による制裁や指導を行っている。・滴滴出行(DiDi)2021年7月には配車アプリ最大手の滴滴出行(DiDi)に対して、国家安全上の理由として審査の開始を発表した。また同月、トラック配車アプリを運営する満幇集団や、求人アプリを運営するBOSS直聘に対しても審査の開始が発表された。いずれも米株式市場に上場したばかりであった。滴滴は、アプリの新規ユーザー登録を停止するよう命じられており、審査については個人情報の収集及び使用に関して重大な法律違反を犯したとしている。こういった規制や締め付けの強化は、大企業の市場における優位な地位の乱用による競争の阻害や、企業が保有する膨大な個人情報の管理、データの安全性などに対する当局の厳しい姿勢を示している。また、企業の影響力が強大化することによって共産党による統治のリスクとなることを懸念しているともみられている。(2)教育関連政府は2021年7月、義務教育段階の学生の学業及び学外教育の負担を軽減するという「双減」の導入を発表した。学生への過剰な宿題や、週末などの休日に授業を行うことを制限するとともに、学習塾の新規開業を認めず、既存の学習塾は非営利団体として登記させることとした。また9月には学習塾の授業料を管理すると発表した。授業料の標準価格を定めて参照させることとし、講師の報酬も制限した。受験戦争の過熱に伴う教育費の高騰がもたらす教育機会の格差是正や、教育費を抑えて少子化対策に繋げる狙いがあるとみられている。7月の「双減」の発表の際、学習塾の経営を行う北京の新東方教育科技は22日から26日にかけて株価が大幅に低下した。(22日:50.9HKD→26日:16.0HKD)。その他の教育関連の銘柄も大きく下落し、関連企業は規制強化の打撃を受けることとなった。(3)不動産関連中国では急速な経済発展、都市部の人口増加、強い持ち家志向、富裕層による不動産投機の過熱などを背景に、不動産価格の高騰が続いてきた。さらに最近では新型コロナウイルス感染拡大を受けた金融緩和の影響により、不動産部門へ資金がさらに流入し、不動産価格の上昇が続いている。都市部の住宅価格は平均年収の数十倍に高騰しているとも言われており、庶民が簡単に手を出せない状況となっている。そこで習近平国家主席は「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」との方針を示し、様々な不動産市場の過熱抑制策を導入している。・「三道紅線(3つのレッドライン)」政策2020年8月、政府当局は不動産企業に対する資金調達等の規制を強化する政策、「三道紅線(3つのレッドライン)」を発表した。3つの審査基準を設け、クリアした項目の数に応じて、負債の年間増加率を0%~15%の範囲で制限し、不動産企業の債務拡大リスクの抑制を目的としている。【図表2】3つのレッドライン(1)前受金を除いた負債の対資産比率が70%以下(2)純負債の対資本比率が100%以下(3)現預金の対短期負債比率が100%以上(出所)各種報道等不動産価格の上昇を前提に借入れを増やして投資を拡大させていた企業に対して、高レバレッジ経営からの転換を促している。・不動産関連融資の総量規制2020年12月には金融機関の不動産関連融資の総量規制を発表し、2021年1月から導入した。金融機関の規模に応じてそれぞれの融資総額に対する不動産関連融資の割合の上限を設定し、不動産セクターへの過剰な資金流入を抑制する措置である。【図表3】人民元建て融資残高に対する割合不動産関連融資の上限個人向け住宅ローンの上限(1)大手銀行40.0%32.5%(2)中規模銀行27.5%20.0%(3)小規模銀行及び非群農村共同組合22.5%17.5%(4)群農村協同組合17.5%12.5%(5)農村銀行12.5%7.5%(出所)中国銀行保険監督管理委員会 ファイナンス 2021 Dec.43コラム 海外経済の潮流 137連載海外経済の 潮流

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