ファイナンス 2021年12月号 No.673
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消費者の嗜好やライフスタイルの変化・不用品を処分する供給側において、リユース市場、特にインターネット上のプラットフォームは消費者のニーズにマッチしていたが、商品を購入する需要側においても重要な存在となっている。・日本では、不足する生活必需品や耐久消費財への消費者の欲求に応えるために、安価で画一的な大量生産・大量消費が必要とされた時代があった。しかし、近年、「量的な豊かさ」はすでに充足され、消費嗜好は多様化している。また、高価であっても自身にとって必要なものにお金をかけ、それ以外の出費を抑えるなど、消費のメリハリ化が進んでいる(図表7・8)。リユース市場には、生産が終了した希少品や、流行が一巡して安価となった中古品など、新品市場で購入できない商品が手に入る可能性があり、リユース市場での取引者が増加することによって、消費者の商品購入の選択肢を広げることとなる(図表9)。・また、足元では大量生産・大量消費・大量廃棄から循環経済への転換が国際的に求められており(図表10)、リユースはエシカル消費のひとつとして、消費者の意識やライフスタイルに定着していくことも期待される。(図表7)消費スタイルの分布高くてもよい【利便性消費】購入する際に安さよりも利便性を重視【プレミアム消費】自分が気に入った付加価値には対価を支払う【安さ納得消費】製品にこだわりはなく、安ければよい【徹底探索消費】多くの情報を収集し、お気に入りを安く買うこだわりはないこだわりがある安さ重視(図表8)消費スタイルの推移2018年2012年2006年2000年0(%)2040608010022221913443736371014131024273240プレミアム消費利便性消費徹底探索消費安さ納得消費(図表9)フリマアプリで商品を購入する理由安く買えるから掘り出しものがあるからお店に売ってないものがあるから物の有効活用をしたいから新品と変わらないから買い物をするのが楽しいから新品で欲しいものがなかったから社会貢献的・環境保護的な意識でその他引っ越しのため0(%)204060800.81.22.07.613.416.818.529.941.178.9(図表10)循環経済の概念別ループ別ループ組立ディストリビューション利用収集クローズドループ・リサイクル素材加工コンポーネント製造シェア/PaaS新たな目的での再利用再製造再販売/再利用/リファービッシュメンテナンス廃棄物リサイクル&サーマルリカバリー循環資源サプライヤーリサイクル材、副産物バージン素材製品設計従来の資源の流れサーキュラー・エコノミー(循環経済)の資源の流れ企業に求められる対応・ここまで述べた通りリユース市場の発展は一時的な流れではなく、今後広く消費者に根付くと考えられる。リユース市場が拡大することで新品(一次流通)が中古品(二次流通)に置き換わるマイナスの影響があるとされているが、新品を製造・販売するメーカー・小売企業には、リユース市場の拡大がもたらす競争環境の変化に対応した企業戦略が求められる。・戦略策定においては、どのような嗜好・ライフスタイルの消費者に価値があるのかに加えて、リユース市場でどのように取引されるのかを分析し、製造・販売を行っていくことも重要である。例えば、フリマアプリを既に利用する消費者の中には、新品購入時にリセールバリューを見込んで(図表11)、高価格帯の商品を選ぶ層が一定数存在する(図表12)。リユースされることを前提に、長期の保証・リペアサービス等の付加価値を付与して、あえて高価格で販売するなど、買値・売値の差が小さくなるように工夫することも、ひとつの選択肢である。・最近では、フリマアプリ大手のメルカリが事業戦略のひとつとして、「データ連携を通じた一次流通と二次流通の融合」を掲げるなど、今まで把握が困難であった二次流通データの把握が容易となっている(図表13)。より良い新品が製造・販売され、中古品としてリユース市場に出回ることで、一次・二次流通双方が拡大することを期待したい。(図表11)新品を購入する際にリセール バリューを考えるフリマアプリ利用者の割合15.445.239.4020406080100よくあるたまにある全くない(%)(図表12)フリマアプリを利用することによる 新品購入単価の変化2261656020406080100(%)とても上がった下がった上がった変わらないとても下がった(図表13)株式会社メルカリの事業戦略 「データ連携を通じた一次流通と二次流通の融合」二次流通データ一次流通データ連携・購買データ・嗜好性データ(検索・閲覧・いいね等)・行動データ(居住・発送・購買)・商品動向データ株式会社メルカリ一次流通企業<データ連携の取り組み>・顧客データ連携:企業の保有する自社IDとメルカリIDを連携・地域データ連携:リアル店舗への集客・双方利用促進・商品データ連携:商品カタログ連携により二次流通での商品動向を可視化、自社ECへの新品購入導線も設置可能にソリューション開発・販売データ分析来店促進・来店頻度向上ターゲティング販促(出典)リサイクル通信、経済産業省「平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る(電子商取引に関する市場調査)報告書」「循環経済ビジョン2020」、総務省「スマートフォン経済の現在と将来に関する調査研究」「IoT時代における新たなICTへの各国ユーザーの意識の分析等に関する調査研究」、環境省「平成30年度リユース市場規模調査報告書」、野村総合研究所「生活者1万人アンケート調査」、株式会社メルカリ「2019年度フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動に関する意識調査」「メルカリ、初の事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」を開催」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2021 Dec.41コラム 経済トレンド 90連載経済 トレンド

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