ファイナンス 2021年12月号 No.673
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プロフィール大和総研主任研究員 鈴木 文彦仙台市出身、1993年七十七銀行入行。東北財務局上席専門調査員(2004-06年)出向等を経て2008年から大和総研。専門は地域経済・金融。12月22日に「自治体の財政診断入門」(学芸出版社)上梓予定(2002)に西武百貨店が撤退。その翌年には宇都宮駅前のロビンソン百貨店が閉店した。平成2年(1990)に開店した駅前百貨店だった(図1の11)。背景には一段と進む郊外化と大型化があった。平成15年(2003)、福田屋2店目となる郊外大型店、店舗面積55,000m2のFKDショッピングモール宇都宮インターパーク店が開店。平成16年(2004)には工場跡地に店舗面積42,000m2のベルモールショッピングセンターが開店した。それぞれ現在は69,000m2、48,000m2に増床している。若者シフトの起爆剤と期待された109も客足振るわず、平成17年(2005)、開店4年にして撤退を余儀なくされた。LRT開通で期待される市街地の変化現在、都心立地の百貨店は東武宇都宮百貨店のみとなった。109の跡地は市に買収されオリオン市民広場、通称オリオンスクエアとなった。上野百貨店の跡地は平成19年(2007)に「うつのみや表参道スクエア」が建った。西武百貨店の撤退後、建物はラパーク長崎屋を経て今はMEGAドン・キホーテになっている。馬場通り一丁目交差点に最後まで残っていたパルコも令和元年に閉店した。上野百貨店の新館「新うえの」跡地は再開発でマンションとなった。街路に面する下層階では足利銀行が営業を続けている。明治の大通り整備以来、最も地価が高かった馬場町界隈だったが、令和2年、最高路線価地点が「宮みらい宇都宮駅東口駅前ロータリー」に移った。中心商業の衰勢が背景だが、駅前百貨店があった西口ではなく東口であるのは、令和5年(2023)開業の路面電車(LRT)「宇都宮ライトレール」への期待があるからだ。宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地まで14.6kmの区間を44分、ラッシュ時6分間隔で結ぶ。宇都宮市は将来の都市構造として「ネットワーク型コンパクトシティ」を掲げている。それぞれコンパクトにまとまった都市、産業、観光そして地域拠点を結ぶネットワークのカギとなるのがLRTだ。令和2年度に始まった第3期中心市街地活性化基本計画にもLRT色がうかがえる。今後、LRTを軸とした新たな街が沿線にできる。ネットワーク化の余勢をかって中枢機能を高めつつ、集客効果を西側の中心市街地に波及させようというものだ。特にLRTの始発となる駅東は宮みらい地区の再開発が進行中だ。来年11月に「街開き」の予定で、エリア内にはコンベンション施設を中心に都市型モール、専門病院、ホテル、マンション等が建ち並ぶ。旧城下町エリアにも再生の兆しがうかがえる。元が屋敷町だから住まう街としての魅力は高い。大型店がしのぎを削った商業地にマンションが建ち、ここ数年来の居住人口は横ばいないし微増傾向にある。東武線西側の「もみじ通り」は昭和に栄えた商店街だがシャッター街となり商店会も解散した。その後、空間デザインを本業に不動産仲介から起業アドバイスまで手掛ける建築デザイン事務所、株式会社ビルススタジオがもみじ通り界隈で店を始めたい人を募集し空き建物を物件化。地道な活動が奏功し個性的なカフェやショップなど22店が出店した。図3下はその一環でアパートの一角にできた私設の図書館で、エリアの価値向上に一役買っている。図3 もみじ通り(上)、もみじ図書館(下)(出所)上は令和3年11月21日、下は令和2年2月17日に筆者撮影 ファイナンス 2021 Dec.39路線価でひもとく街の歴史連載路線価でひもとく街の歴史

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