ファイナンス 2021年12月号 No.673
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であった。10月中旬にはマクロン大統領が第二波到来を正式に認め、パリを含む主要都市圏で夜間外出禁止令が発表される。そしてついに10月末には第二回のロックダウンが導入される。ロックダウン解除後の2020年第3四半期はGDPが前期比+18.7%と急回復したにもかかわらず、第4四半期は-1.3%と再びマイナスに転じた。雇用情勢に関しては、2020年第3四半期の失業率は9.1%であり、当時、フランス中央銀行が「2020年に76万人の雇用が失われ、失業率は2021年第1四半期に10.9%とピークに達する」*15と予測するなど、一層の情勢悪化が見込まれた時期である。失業保険改革については2019年前半の改革案とりまとめ段階で、受給資格・受給額の厳格化については労働組合側から、ボーニュス・マリュス制度については経営側から、それぞれ強い反発が存在したことはすでにふれたが、コロナ危機の進展と失業増加の兆候とともに、労使双方から改革の見直しや、さらには改革全体の放棄を求める声が再び上がり始めていた*16。夏*15) https://www.banque-france.fr/sites/default/les/medias/documents/projections-macroeconomiques_2020-12_vf.pdf*16) 例えば経営者団体の声としてhttps://www.medef.com/fr/actualites/reunion-des-partenaires-sociaux-avec-le-premier-ministre-un-dialogue-tres-direct-et-tres-francまた労働組合の声としてhttps://www.cgt.fr/sites/default/files/2020-06/[CP%20CGT]%20Presque%20un%20million%20de%20ch%C3%B4meurs%20en%20plus%20fin%202020.pdfやhttps://www.force-ouvriere.fr/assurance-chomage-la-suspension-de-la-reforme-doit-porter-aussi?lang=fr*17) https://www.gouvernement.fr/partage/11706-rencontre-des-entrepreneurs-de-france-medef-hippodrome-de-paris-longchamp前に、全体の施行を2021年冒頭に先延ばしをしただけでは一件落着とはならず、バカンス明けには政府と労使代表の間で再度調整が必要な情勢となっていた。それでも2020年8月後半の経営者団体Medefの夏季大会に招かれたカステックス首相は「(7月の対応は)施行の延期であり、放棄ではない。なぜならこれは良い改革だからだ」と述べ、改革自体の放棄は正面から否定した*17。42020年秋、政労使の調整(1)ボルヌ新労働大臣による「前捌き」2020年9月30日には、夏の内閣改造で就任していたエリザベット・ボルヌ(Élisabeth Borne)新労働大臣が政労使会議を開催する。7月の施行延期に加えた「さらなる措置」が失業保険改革についてもなされると新聞紙上などでは予想されはじめた時期である。この会議上、労働組合側は失業手当受給要件厳格化などの改革項目を廃止するよう、また経営側はボーニュ(図1)フランスの四半期ごと実質GDP成長率(対前期比)の推移消費輸出-輸入-1520151050-5-102017Q12017Q22017Q32017Q42018Q12018Q22018Q32018Q42019Q12019Q22019Q32019Q42020Q12020Q22020Q32021Q22021Q12020Q4(%)(出典)仏国立統計経済研究所(INSEE)設備投資その他公需実質GDP(図2)フランス(全土)の失業率の推移11109872015Q12015Q22015Q32015Q42016Q12016Q22016Q32016Q42017Q12017Q22017Q32017Q42018Q12018Q22018Q32018Q42019Q12019Q22019Q32019Q42020Q12020Q22020Q32020Q42021Q12021Q2(%)(出典)仏国立統計経済研究所(INSEE) ファイナンス 2021 Dec.29コロナ危機下におけるフランスの制度改革の行方SPOT

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