ファイナンス 2021年12月号 No.673
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ボーニュス・マリュス制度に関しては、保険料企業負担分に傾斜をつける施策ではあるが、直接的には財政中立的に設計されるものとされた。いずれの改正項目に関しても、失業保険管理機構(Unédic)は、新制度が労働市場参加者の行動変容を通じて副次的・反射的な財政影響を引き起こす可能性があると留保しつつ、さしあたり直接的な財政影響を試算している。(3)改革パッケージの第一段階施行この改革案とりまとめ段階で、手当受給要件・支給額計算方法の厳格化(ロ~ニ)については労働組合側(表1)2019年6月時点における政府公表の改革パッケージ(内容・施行日)改革理念当初定められた施行日改革項目と当初定められた内容短期雇用濫用防止イ)ボーニュス・マリュス制度の導入:・失業保険の保険料率について4.05%を平均的企業の率としつつ、雇用契約の長短などの内容に応じて3%と5.05%の間で変動。・対象企業は、従業員11人以上で、不安定な契約が多い以下7つのセクターの企業◇食品・飲料・たばこ製品製造◇運輸・倉庫業◇宿泊・ケータリング◇木工・製紙業・印刷業◇ゴム・プラスチック製品及びその他非金属製品製造◇水の供給、衛生、廃棄物管理及び浄化◇その他の専門的、科学的、技術的活動2021年1月1日就労時賃金と失業手当の逆転現象解消ロ)失業手当受給要件の厳格化:・改革前は原則、直近28ヶ月中,4ヶ月間の就労が受給要件だったが、これを24ヶ月中,6ヶ月の就労、という要件に厳格化2019年11月1日ハ)受給資格の再充填の厳格化:・改革前は手当受給期間が満了する前に1か月就労をすれば、受給資格を再充填(rechargement des droits)が認められた。改革後はこれを6か月間の就労へ厳格化2019年11月1日ニ)失業手当支給額計算方法の厳格化・手当支給額計算のベースとなる参照日額賃金(SJR)について、改革前は、(直近12ヶ月のグロス賃金÷直近12ヶ月の勤務日数×1.4)で算出いたが、これを(直近24ヶ月のグロス賃金÷直近24ヶ月の契約日数×1.4)に変更・勤務日と休業日を合計した平均月収での算出へと変更することにより、月に数日程度の短期雇用濫用や就労と失業の対価逆転を防止2020年4月1日高所得者の手当水準適正化ホ)高所得者の手当逓減制導入:・就労時にグロスで4500ユーロ/月以上の賃金を得ていた失業保険受給者について、支給期間6か月満了後以降支給額を逓減・逓減率は就労時のグロス賃金に応じて増加し、6500ユーロ/月を超えるところは一律30%減2019年11月1日失業者支援の強化ヘ)ハローワーク(Pôle emploi)を中心とした失業者支援の増強:・求職者、Pôle emploi登録から4週間以内に2回の半日間集中サポートを受けることが可能に・次の職が見つかった際は、より個人に合わせた内容の職業訓練を受給可能に2020年1月1日失業手当受給資格者の拡大(ペニコー法において政治的には決着済)ト)自主退職者、自営業者の対象化:・職業訓練を必要とするような転職計画や起業の計画を有する自主退職者であって、これまで5年以上勤続した者に対象拡大・一定の破産手続きに入った会社を継続して2年以上経営していた自営業者に対象を拡大2019年11月1日(出典)フランス政府公表資料より筆者作成(表2)改革が失業保険財政(歳出)にもたらす効果(2019年9月時点試算)(単位:億ユーロ)2020年2021年2022年失業手当支給に関する新制度(歳出合理化策)受給要件厳格化(ロ、ハ)-9.0-10.0-10.0参照日額賃金(SJR)計算方法厳格化(ニ)-2.5-11.0-13.0逓減制導入(ホ)-0.2-1.4-2.2小計-11.7-22.4-25.2受給資格者の拡大自主退職者+3.0+3.0+3.0自営業者+1.4+1.4+1.4小計+4.4+4.4+4.4(出典)失業保険管理機構(Unédic)26 ファイナンス 2021 Dec.SPOT

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