ファイナンス 2021年12月号 No.673
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4おわりに*43*44本稿では、TONA及びTORFに加え、OISの説明を行いました。次回はTIBORおよびTIBORを原資産にしている金利先物(ユーロ円金利先物)について説明を行います。参考文献白川方明(2008)「現代の金融政策―理論と実際」日本経済新聞出版東短リサーチ(2019)「東京マネー・マーケット 第8版」有斐閣富安弘毅(2014)「カウンターパーティーリスクマネジメント(第2版)」きんざい日本銀行(2018)「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」服部孝洋(2019)「イールドカーブ(金利の期間構造)の決定要因について―日本国債を中心とした学術論文のサーベイ―」ファイナンス10月号、41–52.*43) TORFをインデックスとするスワップが市場で活発に取引されていれば、5年国債を買って、TORFをインデックスとするスワップを払うことで、「TORF+スプレッド」というキャッシュ・フローを作ることができます。逆に、そのようなスワップが取引されていなければ、「TORF+スプレッド」という変動金利を支払う商品を組成するうえで、組成サイドにTORFの変動に係るリスクが残り、完全にヘッジできない状態が生まれます(例えば、OISを払うことでヘッジした場合、TORFと実際に実現するTONAの複利の違いが、組成サイドにリスクとして残ります)。*44) なお、服部(2020b)ではアセット・スワップについて説明しましたが、アセット・スワップも国債と金利スワップのパッケージ商品でした。服部孝洋(2020a)「金利スワップ入門―基礎編―」『ファイナンス』8月号、56–65.服部孝洋(2020b)「アセット・スワップ(スワップ・スプレッド)入門―日本国債と金利スワップの裁定について―」『ファイナンス』9月号、64–73.服部孝洋(2021)「金利指標改革入門」『ファイナンス』11月号、10–19.三宅裕樹・服部孝洋(2006)「イールド・カーブ推定の動向―日本における国債・準ソブリン債を中心に―」『ファイナンス』11月号、65–71.図表8 変動債組成のイメージ筆者(SPC)6か月円LIBOR+0.5%5年金利(1.5%)読者金利スワップ市場日本国債市場100円100円スワップ・レート(1.0%)6か月円LIBOR(変動金利)上記について時間を通じたキャッシュ・フローを確認します。筆者は当初、読者から当初100円をもらって、それを原資に5年国債を購入し、同時に、金利スワップを払います。期中について筆者は、国債から1.5%もらえますが、一方、スワップ契約から1%支払い、6か月円LIBORを受け取るため、利払ごとに「6か月円LIBOR+0.5%」という変動金利を読者に支払います。5年後になったら、5年債が償還を迎え、金利スワップの契約も終わりますから、償還から得られる100円を読者に返します。このキャッシュ・フローを読者からみると、当初100円を支払い、期中、「6か月円LIBOR+0.5%」を受け取り、5年後(満期時点で)100円という元本が戻るので、読者は5年の変動債へ投資したことと同じエコノミーを享受しています。このようなキャッシュ・フローを考えると、筆者が読者に「6か月円LIBOR+0.5%」という利払の約束を行ったとしても、「投資家から受け取った100円で国債を購入してスワップを払う」ことで、短期金利など市場が動いても損益が発生しないポジションを作ることができます(いわば完全に金利リスクをヘッジしながら変動債を組成することができるわけです)。この例は最も単純なケースであり、実際の仕組債や仕組預金のプライシングは、フロアやキャップ、早期償還条項などその他の要因が含まれているため、これほどシンプルではありません。また、実際には、筆者がデフォルトすることで読者が損失を被ること等を避けるため、特別目的会社(SPC)と呼ばれるペーパーカンパニーを利用して変動債を組成します(図表8の「筆者」部分がSPCになります)。ここでは金利スワップに流動性がある場合、変動債を組成するうえでヘッジすることができるイメージを掴むことを企図しています。上記に鑑みると「TORF+〇〇bps」という変動金利を払う変動債を組成するためには、TORFをインデックスとする金利スワップが市場で取引されていないと*43、その組成に係るリスクをヘッジできないイメージをもつことができると思います*44。24 ファイナンス 2021 Dec.リスク・フリー・レート(RFR)入門SPOT

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