ファイナンス 2021年12月号 No.673
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*22*23*22) 後決め複利の計算に際しては、多くのデイカウント・コンベンションが想定されています。「日本円金利指標に関する検討委員会」は、後決め複利のコンベンションに関する理解促進を目的として、TONA複利の利息計算に係るツールを公表しています。詳細は下記をご参照ください。 https://www.boj.or.jp/paym/market/jpy_cmte/cmt210910a.htm/*23) この式は日本銀行(2018)を参照しています。後決め複利の計算方法についてはOISの利払い方法とともに説明されることが少なくありません。具体的には下記の式が用いられますが、結論的には、本文で説明したとおり、1営業日の金利を用いて一定期間複利計算し、年率化しているだけです。ここでは簡単に下記の式が意味することを説明します。{∏(1+)−1=1}×365M日間のTONAの複利計算年率化 (*)まず、上式の記号を確認します*23。Mは金利計算期間における銀行営業日の日数、iは金利計算期間における何番目の銀行営業日であるかを示す変数、Oiはi番目の銀行営業日付のTONA、δiはOiが適用される期間の実日数(カレンダー上の日数)/365日、aは金利計算期間の実日数になります。一見複雑な定義に見えますが、上記がTONAを一定期間複利計算し年率化していることは実際の計算例を見れば明らかです。例えば本日のTONAを0.1%、明日を0.11%、明後日を0.12%とした場合、これらの金利がそもそも年率換算されていることに注意すれば、その複利は(1+0.001/365)×(1+0.0011/365)×(1+0.0012/365)という形で計算できますが、このように掛け算を繰り返していく演算が(*)における∏Mi=1(1+Oiδi)に相当します(上式におけるOiがTONAですが、δiをかけることで土日や祭日により日数がずれる処理をしています)。また、(*)では、1日からM日までのTONAを掛けていますが、例えばMが半年に相当する日数であれば、(*)で計算している式は6か月間の後決め複利に相当します。365/aは年率化するための調整です。ちなみに、各国のリスク・フリー・レートに関する文献を見る場合でも後決め複利が説明されることが少なくありませんが、金利のデイカウント・コンベンションや式の記号等が少々違うものの、基本的には上述の数式が用いられます。BOX 1 OISにおける変動金利の計算方法*22図表3 オーバーナイト(O/N)RFR 複利の算出方法の種類名称説明性質(0)Base Case基本となる手法計算期間に対して複利計算し、計算期間終了日に決済を行う方法利率確定日と利払日が同日となり、事務手続きが困難な可能性がある。(1)Payment Delay支払日修正法計算期間に対して複利計算し、計算期間終了日の数営業日後に決済を行う方法利払日が計算期間終了日ではないため、現在の 債券の取引慣習に必ずしも合うとはいえない。(2)Rate Cut-o参照金利留置法計算期間に対して複利計算する際に、最後の 数営業日のO/N RFR を留置する方法一部の営業日の市場実勢を反映しない。(3)Lookback参照金利前倒法計算期間に対して複利計算する際に、参照する レートを数営業日前倒す方法非銀行営業日をまたぐ金利を正確に反映しない 場合がある。(4)Observation Period Shift参照期間前倒法計算期間全体を数営業日前倒した期間に対し、 複利計算を行う方法(0)、(1)、(4)ではO/N RFR 複利関連指標(SOFR Index 等)の利用が可能。(出所)日本証券業協会資「債券のフォールバック等について」より筆者作成18 ファイナンス 2021 Dec.SPOT

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