ファイナンス 2021年12月号 No.673
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3国立印刷局創立150年記念式典(1)150年のあゆみ国立印刷局は、明治4年7月に、大蔵省の一部局である紙幣司として創設された。この明治4年には、4月に造幣局の創業、5月に新貨条例の布告が行われている。通貨を巡る大きな流れが生まれる中、伊藤博文が大蔵省機構改正案として示した「改制綱領」において、紙幣寮の創設が提案され、まずは紙幣司として孤々の声を上げた後、8月に紙幣寮とされた。当時の紙幣寮は、令和6年度上期に発行予定の新一万円券の肖像となる渋沢栄一を初代紙幣頭とし、紙幣の発行、交換、国立銀行の認可・育成等、紙幣政策全般を所掌していた。一方、紙幣の製造に関しては、偽造防止等の技術が未熟であったことから、ドイツに製造を委託していた。その後、紙幣は国内で製造すべきであるとの声が強まったことから、国産化に向けた研究が進められた。明治9年には国の威信をかけて東京大手町に「朝陽閣」と呼ばれる壮麗な印刷工場を建設し、明治10年には国産第一号の銀行券を誕生させ、我が国の近代印刷・製紙のパイオニアとしての第一歩を踏み出した。以来、関東大震災等の困難を乗り越え、組織も幾多の変遷を重ねてきたが、平成15年4月に独立行政法人国立印刷局となり、現在に至っている。この間、一貫して、経済情勢をはじめとする諸般の社会情勢に左右されてきた紙幣需要へ的確に対応し、いつの時代でも変わらずに、国民から信認される高品質で均質な日本銀行券を安定的に供給してきた。これに加え、明治11年からは海外において日本国民としての身分を保証する公的な証明書である旅券の製造、明治16年からは法律や条約の公布などの国の公報のための出版物である官報の編集・印刷を行っている。さらに、国の歳入金の納付手段である収入印紙、地方公共団体に対する手数料の納付手段である収入証紙や郵便切手など、国民生活に密着した公共性の高い製品や情報サービスを提供してきた。このように長きにわたり、その役割を果たすことができたのは、伝統と高い技術に裏打ちされた製品や情報サービスを提供してきたことに対し、国民の皆様から厚い信頼を寄せていただいたお蔭である。令和の時代においても、先人たちが築いてきた歴史や伝統を守りつつ、時代の要請に応え、その役割を果たしていくことが求められる。国立印刷局は、これまで長年にわたって「ものづくり」を中心に活動してきており、これは今後においても重要な業務である。同時に、デジタル社会にふさわしい新たな価値の創出に取り組んでいくため、創立150年という節目を迎えて、経営理念の見直しを行った。新しい経営理念では、国立印刷局の使命として、「製品」に加えて「情報サービスの提供」を明記した。また、職員の行動規範として、「未来創造」、「持続的研鑽」、「良識ある行動」の三つを掲げた。今後とも、時代の要請に応じた優れた製品や情報サービスを社会に提供できるよう、役職員一同、たゆむことなく研鑽に努めるとともに、一丸となって業務に取り組んでいく所存である。(2)記念式典11月1日、東京都北区の東京工場において、関係省庁、関係団体からの御来賓の御列席の下、国立印刷局創立150年記念式典が挙行された。この11月1日は、明治31年に、当時の印刷局と官報局が統合され、現在の原型が形づくられたことから、創立記念日とした日である。この記念すべき日に挙行された記念式典では、秋篠宮皇嗣同妃両殿下にウェブ配信による御視聴を賜るとともに、秋篠宮皇嗣殿下からビデオ・メッセージで「おことば」を賜った。その中で、国立印刷局が、「我が国の経済の発展と国民生活の安定に貢献されてきたことに対して、深く敬意を表します」と仰っていただくとともに、職員に対しては、「皆様が日々士気高く丁寧な仕事をされていることが、人びとが安心して暮ら(創業当時の印刷工場(朝陽閣))12 ファイナンス 2021 Dec.SPOT

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