ファイナンス 2021年11月号 No.672
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6 経済への影響フランス経済は、三回目のロックダウンの段階的解除が始まった5月以降、回復の途を辿っており、パスサニテールの導入・対象拡大も、経済全体に大きな影響は与えていない。8月末の記者会見において、ルメール経済財務再興大臣は、パスサニテールは、当初は一定の経済的インパクトがあったが、大規模商業施設などごく一部の例外を除き、経済活動への影響は一時的なものであったと発言している。また、9月7日に公表されたINSEE(国立統計経済分析所)のレポートは、銀行クレジットカードの取引額のデータを用いてパスサニテールの家計消費への影響を分析しており、パスサニテール以外の要因が影響している可能性や、特に8月9日以降の対象拡大については調査期間が3週間(8月9日から29日)と短いことから分析結果を慎重に扱う必要があると留保しつつも、以下の点を示している。イ)観光地(テーマパーク・サーカス・美術館・展覧会)について、パスサニテールが導入された7月21日以降、銀行クレジットカードの取引額が減少に転じたことから、来場者数が減少したと考えられる。8月初めから徐々に取引額が回復し、2019年同期を上回る水準となっており、影響は一時的なものと見られる。ロ)映画館における取引額は、7月21日のパスサニテール導入前から7月末まで減少傾向が続き、7月末と8月初めの2週間は7月の平均を下回る水準となった。8月中旬以降は回復したが、概ね2019年同期を下回る状況となっている。ハ)劇場における取引額は、パスサニテール導入前後で大きな変化は見られず、2019年同期の水準を大きく下回る状態が続いている。ニ)昨年秋から休業状態となっていたレストランでは、営業再開直後の6月、7月は取引額が急増し、2019年同期を大きく上回る水準が続いたが、パスサニテールが導入された8月9日からは減少し、2019年同期とほぼ同等の水準となった。導入後3週間の外食支出は導入直前の水準を約10%下回ると推計されるが、ワクチン接種の進展により、この減少は一時的なものとなると考えられる。反パスサニテールデモ参加者数114,000160,000204,000237,000215,000175,000160,000140,000121,00080,00063,70048,000(人)0250,000200,000150,000100,00050,0002021年7月17日7月24日7月31日8月7日8月14日8月21日8月28日9月4日9月11日9月17日9月25日10月2日(出典)仏内務省発表を基に筆者作成マクロン大統領支持率070605040302010(%)(出典)Ifop社世論調査を基に筆者作成2017年5月3月7月7月9月9月11月11月2018年1月2019年1月3月7月9月11月2020年1月3月7月9月11月2021年1月3月5月5月5月5月7月9月 ファイナンス 2021 Nov.67海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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