ファイナンス 2021年11月号 No.672
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仕事が一堂にみられる隔年イベント」。日本は、1991年の第5回展から正式参加、国際交流基金が日本館での展示を主催。上記のプリツカー建築賞受賞者を始め錚々たる建築家が参加。磯崎新コミッショナーの1996年第6回には日本館は金獅子賞(パビリオン賞)。同じく、磯崎新コミッショナーの2002年、第8回では伊東豊雄が金獅子賞(功労賞)。丹下健三も参加した2004年の第9回では、SANAAの(金沢21世紀美術館)が金獅子賞(作品賞)。伊東豊雄コミッショナーの2012年の第13回では、日本館が金獅子賞(パビリオン賞)など。今年、第17回は、寺本健一が共同キュレーターとして参加したアラブ首長国連邦館が金獅子賞(パビリオン賞)受賞。ビエンナーレ財団主催の企画展に招聘される日本人建築家も数多く、2012年の第8回では妹島和世が女性初の総合キューレーター。国際建築展は日本の建築を世界に情報発信し、日本人建築家に活躍の場を提供。8 おわりに建築について、ル・コルビュジェは「建築、それは素材を使って感動を生む関係をうち建てること」と言い、安藤忠雄は、「一に調整、二にも三にも調整という地味で過酷な仕事である。…それでも人の命の安全を守り、安心して過ごせるようにするのがこの仕事の意義であり、そこに自分の誇りがある。また、建築は、周辺の環境や社会に強い影響を与える。責任は大きいが、それだけやりがいのある仕事」と語り、伊東豊雄は「建築は、作ることそのものがコミュニケーションであり、そのプロセスにこそコミュニティーはうまれる」と言い、坂 茂は「建築家は物を作ることが仕事なのですが、本当に重要なのは人を作ることなのではないかと、つくづく思うのです。」と語る。今やスター建築家は、国境を越えて活躍。「有名建築家は、地元の風景だけではなく、世界各地の都市を変える」。日本人建築家の海外進出の背景には、「独創的なデザインが数多く実現」し、安藤忠雄も「日本の建築技術は世界一」という「高い技術力と施工の精度による協力体制」や「国内外のメディアの後押しによって、世界的な評価」があると言われ、「グローバリズムの経済を反映するかのように、…日本人でも国内より海外の仕事が多い状況」だという。このように高く評価されている日本の建築家たちがこれからも世界で活躍することを期待。(主な参考文献)安藤忠雄建築研究所 Tadao Ando(tadao-ando.com)『安藤忠雄展─挑戦』記者発表:安藤忠雄による特別講演安藤忠雄「仕事を作る 私の履歴書」、日本経済新聞出版社、2012年福武總一郎+北川フラム「直島~瀬戸内国際芸術祭へー美術が地域を変えた」、現代企画室、2016年安藤忠雄『安藤忠雄の建築 1』TOTO出版、2007年安藤忠雄「ル・コルビュジエの勇気ある住宅」、新潮社、2004年古山正雄、「安藤忠雄、野獣の肖像」、新潮社、2015年鈴木博之編著、五十嵐太郎、横手義洋著、「近代建築史(部分カラー版)」、市谷出版社、2010年丸山雅子編、「日本近代建築家列伝」、鹿島出版会、2017年中西礼仁「実況・近代建築史講義」、LIXIX出版、2017年竹中工務店のWebsite、https://www.takenaka.co.jp/corp/archive/years/清水建設のWebsite、https://www.shimz.co.jp/heritage/history/鹿島建設のWebsite、https://www.kajima.co.jp/prof/history/index.html大成建設のWebsite、https://www.taisei.co.jp/about_us/corp/ayumi/1169092558063.html大林組のWebsite、https://www.obayashi.co.jp/company/rekishi/yoshigoro.html河上眞理・清水重敦『辰野金吾 美術は建築に応用されざるべからず』ミネルヴァ書房〈日本評伝選〉、2015年磯崎新 聞き手 横手義洋「日本建築思想史」、太田出版、2015年ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐(平成28年度記載)https://bunka.nii.ac.jp/special_content/hlinkGジャン・プティ著、田路貴浩+松本裕訳、「ル・コルビュジェ 自ら語る生涯」、中央公論美術出版、2021年丹下健三について | 丹下都市建築設計(tangeweb.com)ARAZARU ARCHIVES - 磯崎新による丹下健三への弔辞(tumblr.com)Maki and Associates(maki-and-associates.co.jp)神話化する丹下健三・マイスターとは異なる設計手法─「槇文彦氏が述懐する丹下健三」前編|新建築社|note【特別対談】「慶應建築の系譜」|その他|三田評論ONLINE(keio.ac.jp)前田例、「ヒルサイドテラス物語 朝倉家の代官山のまちづくり」、現代企画室、2002年https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=11&d=1進路決めた妹島氏との出会い、西沢立衛氏に聞く(3)(新しい建築の鼓動2011) | 日経クロステック(xTECH)(nikkei.com)「妹島和代+西沢立衛読本ー2013」、A.D.A.EDITA Tokyo、2013年西沢立衛「建築について話してみよう」、王国社、2007年伊東豊雄建築設計事務所(toyo-ito.co.jp)伊東豊雄「伊東豊雄 美しい建築に人は集まる のこす言葉」、平凡社、2020年瀧口範子「にほんの建築家 伊東豊雄・観察記」、ちくま文庫、2012年Brutus Casa 2021 vol249「新・建築を巡る旅。」、マガジンハウス、2021年坂茂建築設計 | Shigeru Ban Architectshttps://www.ted.com/talks/shigeru_ban_emergency_shelters_made_from_paper?lan坂茂+慶応大学SFC坂茂研究所、「Voluntary Architects’ Network 建築を作る。人をつくる。-ルワンダからハイチへ」、INAX出版、2010年Prole – Arata Isozaki & Associateshttp://mmag.pref.gunma.jp/outline/about.htmhttps://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/international/venezia-biennale/arc/17/index.html ファイナンス 2021 Nov.29日本の建築(法隆寺から新国立競技場まで)(下)SPOT

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