ファイナンス 2021年10月号 No.671
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5.終わりに本稿では、スワップションに係るモデルについて実務で必要となる知識を中心に説明をしました。モデルの詳細や発展的なモデルについては大学院レベルの数理ファイナンスの知識が必要になります。そのため、この分野の全体像やモデルの詳細を知りたい読者は、これを説明したテキストが膨大にあるため、関連文献(例えばRebonato et al. (2009)、Crispoldi et al. (2015)、Antonov et al.(2019)、三菱東京UFJ銀行(2014)、木島・藤原(2019)、竹原(2020)など)を参照してください。これまで二回にわたりスワップションについて説明しましたが、次回はLIBOR不正操作を発端とした金利指標改革について説明していきます。参考文献[1]. 木島正明・藤原哉(2019)「リーマンショック後の金融工学」Credit Pricing Corp[2]. 櫻井豊(2016)「数理ファイナンスの歴史」きんざい[3]. 新原祐喜(2011)「確率局所ボラティリティ・モデルのもとでのヘッジ戦略:最尤経路を利用したバリア・オプションの静的ヘッジ」IMES Discussion Paper Series 2011-J-5[4]. 竹原浩太(2020)「マイナス金利モデルについて―金利デリバティブの視点から―」『オペレーションズ・リサーチ』65(7),381-388.[5]. 三菱東京UFJ銀行(2014)「デリバティブ取引のすべて~変貌する市場への対応~」きんざい[6]. エマニュエル・ダーマン(2005)「物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進」東洋経済新報社[7]. 服部孝洋(2020a)「ボラティリティ・スマイルとスキュー―日本国債市場における正規分布から乖離した動きについて―」『ファイナンス』6月号、47-55.[8]. 服部孝洋(2020b)「金利スワップ入門―基礎編―」『ファイナンス』8月号、56–65.[9]. 服部孝洋(2021)「債券(金利)オプション入門-スワップションについて-」『ファイナンス』8月号、49-60.[10]. ジョン・ハル(2016)「フィナンシャルエンジニアリング〔第9版〕 ―デリバティブ取引とリスク管理の総体系」きんざい[11]. 三宅裕樹・服部孝洋(2006)「イールド・カーブ推定の動向―日本における国債・準ソブリン債を中心に―」『ファイナンス』11月号、65-71.[12]. Antonov, A., Konikov, M., Spector, M. (2019)“Modern SABR Analytics:Formulas and Insights for Quants, Former Physicists and Mathematicians” Springer.[13]. Corb, H. (2012) “Interest Rate Swaps and Other Derivatives” Columbia Business School Publishing[14]. Cox, J., Ross, S. (1976) “The valuation of options for alternative stochastic processes” Journal of Financial Economics 3(1-2), 145-166.[15]. Crispoldi, C., Wigger, G., Larkin, P.(2015)“SABR and SABR LIBOR Market Models in Practice:With Examples Implemented in Python” Palgrave Macmillan.[16]. Dimitroff, G. Fries, C., Lichtner, M., Rodi, N. (2016) “Lognormal vs Normal Volatilities and Sensitivities in Practice” Working Paper.[17]. Hagan, P., Kumar, D., Lesniewski, A., Woodward, D. (2002) “Managing Smile Risk” Wilmott 84-108.[18]. Hagan, P.., Kumar, D., Lesniewski, A., Woodward, D. (2014) “Arbitrage-Free SABR” Wilmott 60-75.[19]. Rebonato, R., McKay, K., White, R. (2009) “The SABR/LIBOR Market Model:Pricing, Calibration and Hedging for Complex Interest-Rate Derivatives” Wiley.数理ファイナンスのテキストでは、CEVモデルは「ローカル・ボラティリティ・モデル」と整理されます。ローカル・ボラティリティ・モデルとは、ボラティリティが時間と原資産価格の関数で表現されるモデルを指し、CEVモデルは最もシンプルなローカル・ボラティリティ・モデルと整理されます。もっとも、金融市場の実務家はローカル・ボラティリティ・モデルといった場合、Dupireの公式などノンパラメトリック(あるいはセミパラメトリック)にボラティリティの関数形を定めるモデルを想定する傾向にあります(CEVモデルはパラメトリックにボラティリティの関数形を定めるモデルといえます)。本稿ではこれらの詳細は省きますが、ローカル・ボラティリティ・モデルは三菱東京UFJ銀行(2014)や櫻井(2016)などを参照してください。なお、ダーマン(2005)ではボラティリティ・スマイルに実務家として直面する中で、スマイルを表現するモデルを開発した体験が生々しく記載されています(ダーマンが開発したDerman and Kaniモデルもローカル・ボラティリティ・モデルとして著名なモデルです)。 ファイナンス 2021 Oct.67シリーズ 日本経済を考える 117連載日本経済を 考える

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