ファイナンス 2021年10月号 No.671
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格に加え、年限も考えられますから、いわば4次元を考えることが可能であり、これをボラティリティ・キューブといいます。4.5 シフティッドSABRモデルSABRモデルについてもマイナス金利が許容されてないという問題点があります(SABRモデルにおけるFβは、Fがマイナスである場合、実数に収まるとは限らないので、マイナス金利は許与されていません*23)。2節ではシフティッド・ログノーマル・モデルを紹介しましたが、SABRモデルについてもシフティッドSABRが実務では広く用いられています。シフティッド・ブラック・モデルでは金利がマイナスであるとモデルが使えなくなるため、金利をシフトさせてボラティリティを評価するという方法でしたが、シフティッドSABRモデルも同じ発想です。具体的には、(0,)=[(1)−(2)] /)+2/2=1=212=√()−(,; ,,,)]2=(+ℎ)1=212=*23) 正確には、β=0の場合、前述のとおり、ノーマル・モデルになるため、β=0の時のみマイナス金利でも活用できるといえます。という形でshiftをいれることで原資産であるスワップ・レートをシフトさせます。例えばBloombergのツールでもマイナス金利下でのスマイルカーブの補間においては、Shifted SABRが用いられています(Shifted SABRにおけるハーゲン近似についてもshift項が入ることで調整がなされますが詳細はCrispoldi et al. (2015)などを参照してください)。なお、これについても前述のとおり、どの程度シフトされるかは定める必要があります。例えば、Bloombergが提供するVolatility Cubというファンクションでは200bpsとデフォルト設定がなされています。SABRについてもマイナス金利を許容する様々なモデルが開発されているため、詳細はAntonov et al. (2019)などを参照してください。ハーガン近似は下記の通りです。ここでのポイントは、SARBのパラメータ(α,β,ρ,ν)を与え、マーケットで得られるフォワード・レート(F)を用いれば、行使価格(K)に対して、ブラック・ボルが決まる点です。数式の導出に関心がある人は原論文であるHagen et al. (2002)を参考にしてください。(,)=()(1−2)[1+(1−)2242()+(1−)419204()+⋯]∙(())∙{1+[(1−)2242()(1−)+14()(1−)/2+2−32242] +⋯}=()(1−2)()()=(√1−2+2+−1−)()~((),2(−))≈××(1−224)=[(−)()+√(−)]ここでzとχ(z)のように定義されています。(,)=()(1−2)[1+(1−)2242()+(1−)419204()+⋯]∙(())∙{1+[(1−)2242()(1−)+14()(1−)/2+2−32242] +⋯}=()(1−2)()()=(√1−2+2+−1−)()~((),2(−))≈××(1−224)=[(−)()+√(−)]BOX 1 ハーガン近似について ファイナンス 2021 Oct.65シリーズ 日本経済を考える 117連載日本経済を 考える

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