ファイナンス 2021年10月号 No.671
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(2)物価*3足下の物価は、前年同月の弱さに伴うベース効果に加え、経済活動再開に伴う需要増大と供給逼ひっ迫ぱくにより、前年比で+4.2%の伸びで、足下ではFedの物価安定目標の2%を上回っている。(3)雇用*47月の米国雇用統計において、非ひ農のう業ぎょう雇こ用よう者しゃ数すう(NFP:Non Farm Payroll)は94.3万人増加。経済再開等を背景に着実な雇用の回復が続いているが、雇用者数の水準は、コロナ前(2020年2月)の水準(15,252万人)対比で、依然として570万人少ない状況。3.FOMCの動向とパウエル議長の発言Fedは雇用最大化や物価安定目標*5に向けた進展状況を経済指標や地区連銀報告等を通じて確認し、FOMC*6において政策を議論しているとみられる。6月のFOMCでは、SEP*7およびドットチャート*8を公表し、複数の指標が前回3月の公表時よりも上方修正された。7月のFOMC後の記者会見で、足下の状況を踏まえ、パウエル議長は「テーパリング*9の時期をいつにすべきか等、深い議論をおこなった。*10」と発言した。*3) 足下の物価については、目標を上回って高インフレとなっているが、Fedとしてはそれを一時的と見ている模様。*4) 米国失業率(U3)は5.4%。日本が同2.8%である。また、本稿執筆中に公表された8月の雇用統計速報値では、NFPの増加が7月から鈍化したことや市場予想を下回ったこと等に留意。*5) Fedの2つの法的使命(デュアル・マンデート:dual mandate)、詳しくは2020年12月号のファイナンスの筆者の寄稿「Fedの長期目標と金融政策戦略」を参照していただきたい。*6) FOMC:Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)米国の金融政策を決定する会合を指す。*7) SEP:Summary of Economic Projections、FOMC参加者の経済見通しを示したもの。*8) ドットチャートとはFOMC参加者の適切な金融政策の評価として、政策金利(FFレート)の目標レベルを、ドット(点)で示した図表の通称。*9) Fedがコロナ禍等の危機対応で実施している資産買入等を段階的に縮小する手法。*10) BloombergのMICHAEL MCKEE記者からテーパリングのタイムラインに関して質され「today, I've given you what I can give you because, again, this was the rst really I would say deep dive on the issues of timing, pace and composition」と答えたもの。図表(3):雇用者数雇用者数の推移2020年2月:15,252万人2020年4月:13,016万人2010年2月:12,970万人万人▲570万人2021年7月:14,682万人(年)15,50015,00014,50014,00013,50013,00012,500070809101112131415161718192021(万人)※季節調整値、NFP(非農業雇用者数)(出所)米労働省(事業所調査ベース)図表(4):SEP■実質GDPは、2021年、2023年の見通しを上方修正。■失業率は、2022年の見通しを上方修正。■物価(総合)は、2021~2023年の見通しを上方修正。■物価(コア)は、2021~2022年の見通しを上方修正。202120222023長期5~6年後実質GDP成長率(21年3月の予想)7.03.32.41.86.53.32.21.8失業率(21年3月の予想)4.53.83.54.04.53.93.54.0PCEデフレーター(総合)(21年3月の予想)3.42.12.22.02.42.02.12.0コアPCEデフレーター(21年3月の予想)3.02.12.12.22.02.1注:「実質GDP成長率」及び「PCEデフレーター」、「コアPCEデフレーター」(食料とエネルギーを除いた個人消費支出価格指数)は各年第4四半期の前年同期比、「失業率」は第4四半期の平均値で示されている。(出所)FRB上方修正:太字図表(2):PCEデフレータ7月:+4.2%PCEデフレータ推移(寄与度分解)-1.05.04.03.02.01.00.01月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月20191月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月20201月2月3月4月5月6月7月2021(前年比、%)※2012年=100、季節調整済※コアは食品・エネルギーを除くベース(出所)米商務省コアPCEデフレータエネルギー食品PCEデフレータ(総合) ファイナンス 2021 Oct.39コラム 海外経済の潮流 136連載海外経済の 潮流

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