ファイナンス 2021年10月号 No.671
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コラム 海外経済の潮流136大臣官房総合政策課 海外経済調査係長 金きん城じょう 貴裕米国経済とFedのコミュニケーションの考察 July 2021-Talking about, talking about, what?-1.IntroまずIce-Breakに文字通り熱い話を1つ。筆者と筆者の息子(小5)は、日ごろ互いの肉体と精神の鍛たん錬れんのため週末や休日に10km程のLonger-Run Goal*1を目指しジョギングJoggingをしている。ただ、夏場に入ってから、息子は「暑い、疲れた。」などと言うので、こまめに木陰で休憩を取って、ジュースなどを買い与えているのだが、親として「これはトレーニングといえるのだろうか」と、ふと悩むことがある。思えば、筆者が息子と同い年だった頃に通っていた母校那覇市立与よ儀ぎ小学校は、南国沖縄の中心地にありながら、当時、教室にはエアコンがなく、夏は毎日汗だくで、勉強どころか遊ぶことさえフラフラしてしまう環境だったと記憶している。温暖化が進む現代においては、多くの学校にエアコンが配備され、快適になっていると聞く。筆者の息子や母校の後輩与儀っ子たちには、文明の利器や科学技術をうまく使いつつも、一生懸命勉強や運動に取り組*1) 長距離走の意。正しくはLong distance running等と英訳すべきであるが、Fedの長期目標Longer-Run Goalを喩えた筆者のユーモアを込めた表現であることに留意。*2) 実際、今年の6~7月には米国のデスバレーで54度、比較的涼しい隣国のカナダでも50度に迫る歴史的かつ異常な暑さを記録した。み、環境の変化にも順応しうる丈夫な体と精神を養やしない、これからを生き抜いてほしいと強く思う(まるで結むすびのようなテンションの書きぶりになってしまったが、まだintroである。皆様には本稿のラストまで読んでいただけたら幸いである)。さて、本稿では夏の気温でも経済の注目度でもHot*2な国、米国の金融政策動向について、「(1)米国のマクロ経済指標」および「(2)FOMC(2021年7月開催分まで)の動向とパウエル議長の発言」の2つの視点から考察を加えることとした。2.米国のマクロ経済指標(1)実質GDP成長率2021年4-6月期の米国の実質GDP成長率は、前期比年率+6.5%と4期連続でのプラスとなっており、水準でみるとコロナ禍による落ち込みから回復し、コロナ前の水準を上回る結果が示された。図表(1):実質GDP成長率寄与度分解(暦年・四半期)6.60.1▲2.62.71.52.31.82.32.71.72.32.92.3▲3.43.32.31.30.62.41.22.42.01.92.32.93.83.13.41.90.92.43.22.81.9▲5.1▲31.233.84.56.3暦年四半期(前期比年率)(年・四半期)▲10.0ⅠⅡⅢⅣ080910111213141516171819202015ⅠⅡⅢⅣ2016ⅠⅡⅢⅣ2017ⅠⅡⅢⅣ2018ⅠⅡⅢⅣ2019ⅠⅡⅢⅣ2020ⅠⅡ202110.05.00.0▲5.0(前期比年率:%)(出所)米商務省個人消費純輸出設備投資政府支出住宅投資在庫投資実質GDP38 ファイナンス 2021 Oct.連載海外経済の 潮流

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