ファイナンス 2021年10月号 No.671
18/94

1はじめにいきなりですがクイズです。現在の財務大臣は誰ですか?…考えるまでもない愚問ですね。では、現在の財務省の事務次官は誰でしょう?…本誌を手に取っている方であれば、ご存じですよね。さて、それでは、大蔵省の初代の事務次官は誰か、知っていますか?また、その人はどこの出身でしょうか?…これが分かる方は、よほどの大蔵省(財務省)マニアしかいないと思います。答えは、郷純造(ごう・じゅんぞう)で、私が現在出向している岐阜県の出身の方であります。彼と彼の息子の郷誠之助(ごう・せいのすけ)は、現在放映されている大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一と深く関わりのある人物です。本稿では、二人の生涯について、簡単に紹介したいと思います。2初代大蔵次官、郷純造 (1825~1910)(1)誕生から明治維新まで郷純造は、文政8年(1825年)、美濃国方懸郡黒野村(現在の岐阜県岐阜市黒野)に生まれた。生家は豪農で、純造は三男であった。渋沢栄一と同様、純造も漢学や剣術を近郷で修めた。幼少より読み書き算術は抜群であったという。また「本は片時も離さず、夜は燈明を一本貰い、眠くなるとキリを膝に立てて読書をした」という言い伝えが子孫の家に残っており、大変な勉強家であったようだ。更に、身体も大きく相撲も強かったようで、剣術についても19歳で免許皆伝の巻物三巻を手にしたというから、まさに文武両道、大谷翔平ばりの両立を成し遂げていたと言える。そんな純造は、これも渋沢と同様、立身出世の志を立てる。弘化2年(1845年)20歳の時、笠松代官になる夢を抱き、江戸に上った。岐阜県 総務部長 横山 玄初代大蔵省事務次官を知っていますか?~幕末・明治を生き、   渋沢栄一を新政府に引き入れた岐阜人~〈写真1〉郷純造〈写真2〉郷純造(青年期)14 ファイナンス 2021 Oct.SPOT

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る