ファイナンス 2021年9月号 No.670
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輪島市輪島宿舎2号棟4コロナ禍における要望変更しかし、この年の初頭から新型コロナウイルス感染症が拡大し、月日を重ねても一向に収まる気配が見えず、緊急事態宣言の発出による外出・移動等の自粛要請がなされるなか、輪島市においては移住等の新規需要が見込めない状況が続きました。一方、新型コロナウイルス感染症に対応する医療機関へ勤務する医療従事者への負担は増加しており、令和2年4月に、輪島市より、医療従事者の負担に配慮するため、輪島宿舎から1.2kmにある市立輪島病院の医療従事者用の宿泊施設として、輪島宿舎の空き住戸を利用できないかとの相談を受けました。5コロナ禍における国有財産の活用当局としても、コロナ禍という国難を乗り越えるため、輪島市からの要望に可能な限り応えたいとの思いがありました。しかし当時は、新型コロナウイルスに関連した国有財産の活用に関する取扱いについて定めがなく、同様の案件が全国へ波及することも想定されたことから、当局は輪島市からの要望を本省理財局へ報告し、方針の検討を依頼しました。また、本省理財局において方針が決定されるまでの間は、輪島市に対して、国の現行制度の説明を行うとともに、随時、検討状況について情報提供するなど、輪島市と連携を図りながら調整を進めていきました。同時に当局は、合同宿舎の管理者として、管轄保健所へ感染拡大防止策について確認を行うとともに、輪島市に対しては宿舎の使用に当たって必要となる措置について具体的に提示したうえで内部調整を促すといった対応を行いました。そうしたなかで、本省理財局においても新型コロナウイルス感染症に関連した国有財産の活用に関する方向性が整い、輪島市に対して国有財産法第22条等に基づき、輪島宿舎の空き住戸を医療従事者用の宿泊施設として無償で使用許可することが可能となりました。その結果を受けて輪島市より、令和2年5月から同年7月までの間、輪島宿舎2号棟の居室10戸及び自動車保管場所10台分を使用したいとの申請があり、当局もその内容を承認しました。当局としては、全国の先例がないなかで当初の相談を受けてから約2週間という短期間で、本省との調整を含め、迅速に手続きを完了し、輪島市からの要望に応えることができました。6おわりに輪島市より新型コロナウイルス感染症の対応のため、国有財産を活用できないかとの相談を受け、担当者として「何とか輪島市の意向に沿って、地域の課題解決に貢献できないか」と考えながら、一方で「法令の適切な運用」との狭間で頭を悩ませたことを思い出します。今回、国有財産の有効活用によって、地域の課題を一つ解決することができ、地域貢献が果たせたことは、今後の国有財産行政に携わっていく上で、大きな自信となりました。輪島市と当局は、輪島市の地域活性化、地域連携及び地域価値の向上を図ることを目的に、平成30年6月に「地域活性化等に関する包括連携協定」を締結しており、これまでも友好な関係が構築されております。これからも、財務局が地域と連携し、中央や各省庁等との「つなぎ役」を果たしながら、地域・社会のニーズに応じた国有財産の有効活用を図るなど、地域の課題解決をサポートできるよう、努めていきたいと思います。88 ファイナンス 2021 Sep.連載各地の話題

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