ファイナンス 2021年9月号 No.670
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八幡平市5過疎地から「未来」をはじめよう起業志民プロジェクト発祥の企業が、市販の安価な汎用機器を活用して他に類例のない、ひとつのツールで遠隔で医療と見守りを同時に実現するアプリを開発。医療と福祉を持続可能に変革するソリューションとして、八幡平市で社会実装するための取り組み、「八幡平市メディテックバレープロジェクト」がスタートしました。安価な汎用デバイスで持続可能な医療と福祉を実現これまで育成した起業家たちをコアメンバーとして八幡平市メディテックバレーコンソーシアムを設立。医療機関や大学などと連携し、社会に実装するための研究開発が進んでいます。まだスタートしたばかりですが、心拍など人の生体情報を通常の数千分の一に極小化する独自技術によって、携帯電話が圏外でも利用可能な見守りシステムを実現。離島や山間部の医療や福祉の持続可能性を高めることに成功しました。この技術を応用し、脳卒中などの疾病予測AIの開発にも着手しています。こうした様々な分野に応用が可能なコア技術に大企業などからも注目を集めるとともに、同様の悩みを抱える複数の自治体から、この仕組みを活用したいとのお声掛けをいただき始めております。これまでに興味を持っていただいている地域は、地方の過疎地だけではありません。医師が遠隔で診察することが可能であることから、COVID-19患者のモニタリングでの利用が進んでいるほか、都市部の自治体でも市民の健康増進ツールとしてこの技術を応用したサービスの検討が進んでいます。過疎地の課題は、人口が少ない地域特有の問題だからビジネスにならないと思われがちですが、このようにたった一つのアイディアと、それを実現するための技術が揃えば、スケールする可能性を秘めています。過疎地で生まれて、地方の課題を解決するための実証を重ねたプロダクトの中から、次世代のユニコーン企業の萌芽が生まれてくるのかも知れません。日本は世界で最も早く高齢化が進んでいますが、いずれ世界中で同様の問題を抱えることになると言われています。国連経済社会局の世界人口推計によると、新興国でも今後数十年で人口が減少に転じる国が多くあることが指摘されています。特に中国では国連の予想より7年早く、2010年から人口減少が始まったとの報道もありました。日本の過疎地の抱える問題は、実は世界最先端のペインであり、この解決は大きなビジネスチャンスなのです。過疎であることを逆手に取り、実証と研究開発に最適なフィールドとして医療と福祉のDXを推進するメディテックの中心地となることで、新たな成長産業の創出が現実のものになりつつあります。過疎地だからこそできる、起業家人材の育成と世界の課題解決への挑戦は、ここ八幡平市から始まっています。さぁ、未来をはじめよう。過疎地の課題解決からビジネスチャンスを創造する!地方創生コンシェルジュ東北財務局盛岡財務事務所長 大沼 一弘標高900メートルの高所に当時最新式の集合住宅や映画館が立ち並び、「雲上の楽園」とも称された松尾鉱山の閉山から52年。現在の八幡平市では、今回のスパルタキャンプ修了生による起業をはじめ、岩手山麓の地熱による熱水を利用したバジル栽培、地元の湧水を生かしたクラフトビールの醸造など新しい動きが次々と生まれています。人と自然が新しい可能性を切り開く。これからの八幡平市に是非ご注目ください。86 ファイナンス 2021 Sep.連載各地の話題

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