ファイナンス 2021年9月号 No.670
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どのような影響を与えるかを注視する必要がある。図5-1 日本 地域別直接投資収益(GDP比)200005101520210(%)中国EU+英国その他直接投資収益(GDP比)その他中南米+カナダオーストリアその他アジア米国ケイマン諸島図5-2 日本 地域別証券投資収益(GDP比)200005101520210(%)(注)2013年以前の第一次所得収支全体は、日本銀行がIMF国際収支マニュル5版準拠統計を6版に準拠した基準に組み替えた遡及計数。地域別所得収支は、筆者が5版の統計を用いて第一次所得収支全体を按分し作成。また「EU+英国」は、2020年2月より英国がEUに含まれていないことを調整している。(出所)図5-1、2は財務省、日本銀行、内閣府の統計より作成。中国EU+英国その他第一次所得収支(GDP比)その他中南米+カナダオーストリアその他アジア米国ケイマン諸島本論の第2節で説明した投資収支の分解方法の詳細を説明する。下記(A1)式はt期の所得収支を表し、4種類(N=4)の各資産・負債(1)直接投資、(2)証券投資(株式・投資ファンド持分)(3)証券投資(債券)、(4)その他貸付などの受取り(Rct)と支払い(Pct)の差の合計を示している(cは各資産・負債の種類を示す)。自国通貨での受取り(Rct)と支払い(Pct)の差は、自国通貨建ての前期の各対外資産をAct-1、各対外負債をLct-1とすると、(A2)式のように展開される。=∑[−]=1=∑[−1(−1÷,−1,)−−1(−1÷,−1,)]=1=∑[−1(,−1,,)−−1(,−1,,)]=1(−1−−1)(+2)(1∆2+1∆2)(−1+−12)(+2)(1∆−1∆)(−1+−12)∑[(,−1−,−1)(,+,)2(12∆,+12∆,)]=1(−1+−12)∑[(,−,)(,−1+,−1)2(12∆,+12∆,)]=1,,c,,(A1)  =∑[−]=1=∑[−1(−1÷,−1,)−−1(−1÷,−1,)]=1=∑[−1(,−1,,)−−1(,−1,,)]=1(−1−−1)(+2)(1∆2+1∆2)(−1+−12)(+2)(1∆−1∆)(−1+−12)∑[(,−1−,−1)(,+,)2(12∆,+12∆,)]=1(−1+−12)∑[(,−,)(,−1+,−1)2(12∆,+12∆,)]=1(A2)  =∑[−]=1=∑[−1(−1÷,−1,)−−1(−1÷,−1,)]=1=∑[−1(,−1,,)−−1(,−1,,)]=1(−1−−1)(+2)(1∆2+1∆2)(−1+−12)(+2)(1∆−1∆)(−1+−12)∑[(,−1−,−1)(,+,)2(12∆,+12∆,)]=1(−1+−12)∑[(,−,)(,−1+,−1)2(12∆,+12∆,)]=1(A3)(A2)式のRFct(PFct)はt期の外国通貨での受取り(支払い)を表し、前期t-1期の外国通貨建ての各資産AFct-1、または負債LFct-1で除すことにより、為替レートの影響を除いた利回りとなる。ERA,ct(ERL,ct)は各資産・負債の通貨構成を反映した為替レートの指数(投資国の通貨当たりの外国通貨)を表している。前期t-1期の為替レートは各対外資産(負債)に対応し、当期t期に対しては、受取り(支払い)に対応している。さらに(A2)式の利回りであるRFct/AFct-1(PFct/LFct-1)をrA,ct(rL,ct)に置き換え(A3)式とする。この(A3)式を4つの要因(1)ストック効果、(2)為替効果、(3)構成効果、(4)収益効果に分解する。(1)ストック効果ストック効果は前年の対外純資産の大きさが与える影響、すなわち資産が負債より大きければ受取りが大きくなることを捉えた効果である。この効果は(A4)式のように受取り(支払い)の利回り、為替レートの変動が資産と負債で同一(資産と負債の平均値)と仮定して計算する。=∑[−]=1=∑[−1(−1÷,−1,)−−1(−1÷,−1,)]=1=∑[−1(,−1,,)−−1(,−1,,)]=1(−1−−1)(+2)(1∆2+1∆2)(−1+−12)(+2)(1∆−1∆)(A4)ΔERAtとΔERLtはそれぞれ前期からの為替レート(一国全体の対外資産と対外負債の通貨構成を反映)の変動を示す(ΔERAt≡ERAt/ERAt-1、ΔERLt≡ERLt/ERLt-1)。補論1.所得収支の要因分解(Forbes et al. 2017) ファイナンス 2021 Sep.81シリーズ 日本経済を考える 116連載日本経済を 考える

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